小室圭の事務所プロフィールを、その世界から来たジョーが読み解く

前回は小室圭の就職先であるLowenstein Sandler LLP(ローウェンスタイン・サンドラー)について自分の経験を元に解説したので、今回は当事務所のサイトに掲載されている彼のプロフィールを(つい最近まで類似したプロフィールが公開されていた者として)読み解いていきたい。

【学位】

事務所のプロフィールによると、小室圭は2019年にL.L.M.と呼ばれる学位を、2021年にJuris Doctorと呼ばれる学位を取得している。

L.L.M.とは日本の大学の法学部を卒業した人が米国に留学する際に取得する学位で、1年間で取得できる。L.L.M.を取得すれば多くの米国の州で司法試験を受験できるので、日本企業の法務部社員や日本の弁護士が米国の弁護士資格を保有している場合、学位は大抵L.L.M.だ。

他方で、Juris Doctor(通称、「J.D.」)とは一般の米国人が弁護士になるために取得する学位で、取得するのに3年かかる。

学位がL.L.M.でもJ.D.でも米国弁護士になれるのだが、双方の大きな違いは、前者だと米国本土での就職に大変苦労することだ。その理由は簡単で、一般の米国人はほぼ例外なしにJ.D.を取得するので、法律事務所の採用活動もJ.D.取得者を対象としているからだ。(米国法律事務所の東京支部での就職は事情が大きく異なることに注意)

小室圭は当初L.L.M.プログラムに入り、その後J.D.も取得することにしたようだ。ニューヨークで勤務することを希望していたのであれば、これは賢明というより必須の決断であったと思われる。

【受賞】

小室圭のプロフィールには、L.L.M.とJ.D.を取得した際の受賞歴が記載されている。

L.L.M.の横に「cum laude」と記載されているが、このラテン語は卒業時の成績が優等であったことを意味する。いわゆるラテン栄誉には三段階あり、高い順にsumma cum laude、magna cum laude、cum laudeと授けられる。基準は大学ことに異なるが、フォーダム・ロースクールの場合、卒業時点のG.P.A.(Grade Point Average(成績平均値))が上位1%、上位12%、上位1/3だった卒業生にそれぞれ与えられる模様だ。よって、ロースクール1年目の小室圭の成績は上位12%〜33.33%の範囲内だったと考えられる。

J.D.の横にはラテン栄誉が記載されていない。果たして、小室圭のJ.D.プログラムの成績が上位1/3ではなかったのか、J.D.プログラムに編入したためラテン栄誉をもらう資格がなかったのかまでは分からない。(ちなみに、僕はボストンカレッジ・ロースクールのJ.D.プログラムに編入したが、同校では編入生も卒業時にラテン栄誉をもらう資格を有していた)

ラテン栄誉に関する記載がない一方で、J.D.取得に関連して二つの受賞歴が記載されている。

米国の大学やロースクールでは、特に優越な学問を修めた卒業生を表彰するという習慣があり、これを受賞することはラテン栄誉よりずっと名誉がある。しかし、この「卒業式表彰」は数が限られているため、首席以外が複数受賞することはまずあり得ない。

フォーダムのサイトによると、小室圭のプロフィールに記載されている受賞歴はどれも「卒業式表彰」に該当しない。したがって、プロフィールに載っている受賞歴はいずれも比較的マイナーな表彰であったと思われる。僕もそのような表彰を(大学時代に)受けたことがあるが、その事実を法律事務所の自己プロフィールに記載はしなかった。

【肩書き】

Lowensteinのサイトでは、小室圭が「Our Lawyers」(所属弁護士)の一人として紹介されている。肩書きが「Law Clerk」なので彼を「事務職員」扱いしている報道が一部見られるが、これは誤解である。

米国では、ロースクールを卒業して司法試験を受験した者が、司法試験に合格するという前提で法律事務所に入所するのが一般的だ。司法試験合格後、弁護士会による「moral fitness」と呼ばれる倫理的な適切性の審査を通るまで正式な弁護士にはなれないため、「弁護士になる予定だけどまだなれてない」宙ぶらりん状態の所員の肩書きを通常「Law Clerk」と記載する。

(なお、この場合の「Law Clerk」とは、裁判官の補佐役である法務書記を表現するときの「Law Clerk」とは意味が異なる)

Law Clerkが司法試験に落ちると解雇されるのかというと、必ずしもそうではない。「米国の司法試験は合格して当たり前」と考えられている節があるが、猿も木から落ちるということわざにあるとおり、どの大手事務所でも、毎年、司法試験を甘くみて不合格になる者が1、2人はいる。僕が所属していた法律事務所では、そういう不甲斐ない人たちには「試験勉強休暇」という名目で数週間の有給休暇が与えられていた。同期の間で有名人になった彼らが半年後にちゃんと合格できたかまでは把握していない。

(なお、過去のブログにおいて日本の留学生が米国司法試験に受かるのは大変だと書いたが、これはあくまでL.L.M.を取得した留学生を念頭に置いており、一般の米国弁護士と同様の境遇であるはずの小室圭に関しては、合格することが当然のこととされているはずだ)

【職務】

Law Clerkは正式な弁護士ではないものの、実質、資格保有者である弁護士と同様の扱いを受ける。

もっとも、司法試験を合格したばかりの弁護士もLaw Clerkも、大した仕事ができないという意味では共通している。そんな彼らが唯一貢献できることは、「いつ雑務を振られても大丈夫なように、職場で待機している」である。その立場にいた僕の経験からすると、「雑務」とは、昨年の届出書の年度を本年度に更新する、みたいな秘書の業務を超えない作業がもっぱらだ。

結局のところ、どの職場でも下の人は上の人がしたくない面倒な作業を押し付けられる運命にあり、大手法律事務所では、そういう作業が終了するのが深夜3時になるのが日常沙汰だ。ニューヨークの地下鉄は深夜も走っているものの、さすがにこの時間帯になると事務所のお金(というか、クライアントのお金)を使ってハイヤーで帰宅するのが普通になる。一部の報道が小室圭がハイヤーに乗って帰宅している映像を流しているが、僕が推測するにあたり、あれは「VIPハイヤー」ではなく「ペイペイ弁護士ハイヤー」である。

【キャリア】

小室圭のキャリアに関して僕がどうしても考えてしまうのは、勤務先がニューヨークの法律事務所ではなく、ましてやLowensteinの本拠地でもなく、Lowensteinのニューヨーク支部であるという中途半端さだ。

前回解説したとおり、Lowenstein Sandlerはニュージャージー州の大手事務所だ。Lowensteinに所属していれば、ニュージャージー州の大企業の重要案件に携われることは間違いない。しかし、それは本拠地での勤務について言えることだ。いくらLowensteinが近年ニューヨークで急拡大しているとはいえ、ニューヨークの大企業が法律事務所を起用する際は、やはりLowensteinではなくニューヨークの大手事務所を選ぶだろう。僕はLowensteinとニューヨーク法律事務所の内定のどちらを承諾するかで迷ったが、Lowensteinの勤務先が本拠地でなかったらそこまで迷わなかったと思う。

さらに、事務所のプロフィールでは小室圭が日本語に堪能であることがアピールされているが、Lowensteinではそれが宝の持ち腐れで終わってしまう可能性が高い。

Lowensteinはニュージャージー州に拠点を置く事務所であり、日本どころか海外のどこにも拠点を有していない。僕が入所した法律事務所は世界16諸国に拠点を構えていたが、そんなグローバルな事務所のニューヨークオフィスに所属していても、日本語を要する案件に巡り会う機会はなかった。小室圭がLowensteinで日本語を活用できる案件に携われる機会は皆無だろう。

そうすると気になるのは、彼が置かれる周囲の環境である。

Lowensteinは極めて優秀な米国弁護士が揃っている法律事務所だ。そんなエリート弁護士のネイティブな英語力に日本人として張り合えるわけもなく、自分の武器となり得る日本語の出番がないのでは、自分の居場所を見つけるのに苦労するのではないか。

少なくとも僕自身はそう考えた。だから当時の僕は、Lowensteinの内定を辞退し、日本にも拠点があるニューヨークの法律事務所に入ることにした。そして数年後、必然的のように東京転勤となり、それ以降の僕のキャリアは日本が拠点になっている。

「ニューヨーク勤務」と言うと華やかで聞こえがいいが、日本語が話せる者にとって、それは決して自分の力が最大限発揮できる環境とは言えない。

僕でさえそうだったのだ。小室圭の今までの経歴と今後のキャリアを考えた時、せっかく使える日本語が求められない環境にいては、満足できるとは到底思えない。

だから僕は、彼が遅かれ早かれより国際的な事務所に転職すると確信している。

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