水原一平がやったことは、精神病になればやりかねない

賭博にはまり、何億円もの借金を抱えた挙句、大谷翔平から1600万ドル(25億円)も窃盗した大谷の元通訳である水原一平を、多くの人は「バカ」やら「最低の人間」やらと酷評している。

そういった描写を否定するわけではないが、僕は彼について「病人」と表現するのが最も相応しいと考えている。

そして、精神病の人は、合理的には説明できない行動に出る。

なぜ依存症になりかねないのに賭博に手を出してしまうのか。それは、酒や麻薬と同じで、気分が高揚するからである。

僕が初めて賭博を経験したのは、友達とラスベガスに行った大学時代。ブラックジャックのテーブルに座って、100ドル分(1万円超)のチップを手にした時の興奮を僕は一生忘れないだろう。その瞬間、僕は自分が相当な賭博好きであることを自覚した。

米国では、先住民族であるインディアンが領有する土地に多くのカジノが所在する。いわゆるインディアン居留地(Indian reservation)は米国中にあるため、概ね米国のどこにいても、数時間運転すればカジノに行ける。

そんな国だから、僕は米国に住んでいた頃、頻繁にカジノに足を運んでは、ブラックジャックテキサス・ホールデム・ポーカールーレットクラップス等、ありとあらゆるゲームで遊んでいた。睡眠が大好きであるにもかかわらずカジノに行くとほぼ徹夜なので、僕の祖父も親も、オレオレ詐欺の「孫が博打で大損した」シナリオは僕なら十分ありえると考えてしまう

だからこそ僕は、何度カジノに行っても、どのゲームで遊んでも、最初に経験した高揚気分を必ず覚えておくよう心がけている。感覚が麻痺すると依存症になってしまい、一旦賭博の沼にはまると、あっという間に手に負えない状態に陥ってしまうから。

これは、どの精神病でも言えることだと思う。

2000年代、マーク・ドライヤー(Marc Dreier)と呼ばれるニューヨーク州弁護士が200億円近く窃盗したことが発覚し、物議を醸した。彼はイェール大学ハーバードロースクールを卒業した超エリートで、5拠点に250人もの弁護士を抱えていた法律事務所の実質的なオーナーでもあった。

そんな彼が窃盗してしまったのは、いくら金と権力があっても物足りなかったからである。

このインタビューを見ると、自己愛性パーソナリティ障害のせいで、彼が自分をまったくコントロールできなくなってしまったことがよく分かる。

  • 権威ある事務所と豪華な生活を維持するための資金を確保するため、元クライアントの名前を騙って、150億円(1億ドル)もの約束手形をヘッジファンドに発行した
  • 利息を払えなくなると、支払い期限を伸ばしてもらうよう、元クライアントのオフィスでヘッジファンドと交渉した
  • 嘘がばれるのが分かっているのに、年金ファンドの代理人のふりをして、ヘッジファンドから3300万ドル(50億円)をも調達しようとした

生活に困らないはずの収入があるのに、窃盗する。返済できずに借金を重ね、負債が雪だるま式に膨らむ。詐欺をなんとか続けるため、ちょっと調べればばれてしまう嘘をつく。まさにどれも、水原が犯したことである。

水原がやらかしたことについて、僕は「信じられない」とは思っていない。

自分自身が賭博好きだからこそ、一歩間違えれば同じ立場になりかねないと肝に銘じているから。

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