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ジョーのインタビュー〜恐れる以上に得るものはない(前編)

以前からしつこく「俺をインタビューしろ」と言ってきてるジョー。うざいのでとにかく黙らせるために形式的なインタビューを行ったところ、どうせましな話は聞けないだろうと諦めていたら、恐れてた以上に得るものがなかった。

---本日のインタビューはさっさと終わらしましょう。

僕はいくらでも時間があるから、そんなに気を使わなくてもいいよ。

--そっちが良くてもこっちがイヤなんです。で、なんでそんなにインタビューをしてもらうことに拘るんですか?

それはさー、僕の夢って有名人になることなんだけど、インタビューを受けるってことは有名人になれた証じゃん。

迷惑男佐久沼條治、ふたたび!(後編)

一緒に佐久沼の席に向かいながら、まさゆが軽い口調で話しかけてくる。根っこは陽気な若者なのである。

「左飛道先輩って、佐久沼先輩と一緒に仕事するようになって長いらしいですね」

「そうよ。入社してすぐあの人の下の配属になってから3年が経つ」と、忌々しい口調でレヌは答える。

「でも、佐久沼先輩って弁護士なんですよね。留学してる、って噂もあるし」

まさゆが大分誤解しているようなので、レヌは足を止めて言い聞かせる。

「これはいい社会勉強になるから教えてあげるわ。弁護士にもピンからキリまであって、あの人はキリにも入らないの。弁護士界に裏口入学してるんだから」

「えー、そんなこと可能なんですか」と、純粋なまさゆは信じられないようだ。

「時々、あの人、『あいつには弁護士の資格がない』とか、『こいつには地球にいる資格がない』とか偉そうに評論し始めるけど、最も資格がないのはあの人なの」

迷惑男佐久沼條治、ふたたび!(前編)

この物語はフィクションであり、主人公である佐久沼條治の名称および性格と立ち振る舞いが著作者のものと瓜二つであることは、すべて偶然です。

(まずは第一弾である「佐久沼條治という、ある迷惑男の話」からお楽しみください)

「あの、今ちょっとよろしいでしょうか」

下を向いて契約をレビューしていた左飛道(さひみち)レヌは、声をかけたのが誰なのかすぐに分かった。顔を上げると、案の定、井馬(いま)まさゆが不甲斐ない顔をして立っている。

3年前の自分も終日似たような表情をしていたことを思い出し、自分もずいぶんたくましくなったものだと、自分を褒めたくなった。

「どうしたの」

そんな表情をしなければならない根源など一つしかないのだが、とりあえず聞いてみる。

「この前の出張の経費を清算しようと思って、佐久沼先輩にこれを渡そうとしたんですけど。。。」

最後には聞こえないほど声が小さくなってしまったので、レヌはまさゆの手元に目をやる。そこにあった領収書をみて、瞬間的に何が起こったのか理解した。

「そのしゃぶしゃぶ食べ放題い温野菜の領収書を、あの人に渡そうとしたのね」

最終学歴卒園の国際弁護士、中学校受験に挑む〜採点の巻〜(後編)

エリート学歴からますます遠のいている厳しい現実に憂鬱になっていたら、受験シーズンのためか、光栄ゼミナールのCMを目にすることになった。それによると、受験は戦略であるらしい。

しかし僕は、中学受験に挑むにあたってちゃんと戦略の重要性を理解しており、まさにCMにあるとおり、「合格に必要なことを冷静に見極め」、「自分の強みを最大限に活かすための選択」を行なったのだ。

僕は一体どこで間違えたのだろう。

最終学歴卒園の国際弁護士、中学校受験に挑む〜受験の巻〜(後編)

ここまで理科のできが悪いと、灘中学校の合格は算数にかかってしまう。

最初の問題は方程式。これはちゃんと解けたが、簡単な計算問題が1問目として出題されるのは受験者を油断させるための罠であることを、僕は高校入試でちゃんと学習済みである。

そこで丁寧に残り12問に目を通すと、なんと図ばかり。円、三角形、四角形しか出てこないのは計画通りだが、問題は、三角形を二つくっつけるだの、円の中に三角形を入れるだの、二次元のものをよくここまでごちゃごちゃにできるものだと感激してしまうほどにややっこしい。

最終学歴卒園の国際弁護士、中学校受験に挑む〜受験の巻〜(前編)

念入りに戦略を練って、受けることにしたのは偏差値77の灘中学校の入試2012年版

受験は二日間に渡って実施されるらしい。初日は国語、理科、数学で、二日目は国語と数学だそうなので、ちゃんとその順番で受ける。

まずは国語の1日目。

問題にざっと目を通すと、内容は読解、漢字、文法、ことわざ、そして俳句。高校入試とは違い、死語である古典や日本語ではない漢文が出題されておらず、希望が持てる。

小学校中退の国際弁護士、偏差値78の高校入試に挑む〜採点の巻〜(後編)

このように採点していった教科の総合点は140点。ちなみに、合格者最低点は218点である。

結局合格ラインに64%しかたどり着けなかったわけで、開成高校が偏差値78であることを踏まえると、僕の偏差値は50といったところか。

こうして意外にも開成高校の入試に落ちてしまったわけであるが、このチャレンジを通じて僕は、自分について重要なことを多く学んだ。

小学校中退の国際弁護士、偏差値78の高校入試に挑む〜受験の巻〜(後編)

ところが、英語の最初の文章を読んでいるうちから、「?、やけに難しい文章だな」、「?、peripateticってどういう意味だ」と頻繁に危険信号が点りはじめる。

で実際に問題に取り掛かりはじめると、まずは「空所に入る適切な語を答えなさい」という問題で、そういえば僕は英語でも語彙が少ないんだったということを思い出し、その後の「日本語で答えなさい」という問題で、そういえば僕は日本語が弱いんだったということを思い出した。

英語のテストなのに日本語での回答が求められることの理不尽さに憤っていたら、回答用紙に空白が残ったまま時間が切れてしまった。

小学校中退の国際弁護士、偏差値78の高校入試に挑む〜受験の巻〜(前編)

開成高校入試チャレンジ戦略を練った後受けることにしたは、一番合格しそうな2017年版である。

まずは、100点満点中30点を目標としている国語から。

最初の文章を読み始めると、なんと夕張市についてではないか。先日、経済破綻したことで有名なこの町が現在どう復帰の道を辿っているのかについての朝日新聞の記事を読んだばかりである。得意の政治、経済も絡んでくる内容だ。こんな問題、読解力などに頼らずとも解ける。

小学校中退の国際弁護士、偏差値78の高校入試に挑む〜戦略の巻〜(後編)

でも社会にすべての望みをかける必要はないのだ。何と言っても英語がある。

米国に長年住んでいた僕にとって、英語での満点は当たり前といえる。日本の英語の試験ではしばしば意味不明な記号「ə」が現れることがあるが、開成高校ともあろう学校が入試でひっかけ問題など出題しないと信じている。

よって、英語満点で理科0点を確実に挽回。

残るのは数学と国語。。。

まずは国語から。

中学時代に通っていた塾で模擬試験というものを毎月受けていたのだが、国語の点数はいつも概ね10点台だった。開成高校の入試では国語の平均点が50点から70点であることを鑑みると、さすがに10点台はまずい。

小学校中退の国際弁護士、偏差値78の高校入試に挑む〜戦略の巻〜(前編)

僕は西日暮里にある将棋バーというマニアックな場所に月2回通っている。

西日暮里といえば偏差値78の開成高等学校がある街。時々この超進学校に通っている学生を見かけることがある。

前々から日本での小学校中退という最終学歴を汚名返上するため高校受験したいと考えていたのだが、自分の日本語力と性格では無謀かと諦めていた。でも開成高校在学生を観察するようになってから、「こいつらには将棋で負けるかもしれないけど、米国証券法の知識では負けない気がする」と思うようになった。

よくよく考えてみれば、高校入試を受けるのは所詮は中学生。一方の僕は、合格率85%の司法試験に受かった米国法曹資格保有者。普通の中学生にできることが僕にできぬはずがない。 

僕は(米国)大学生になるために生まれてきた

僕は大学生になるために生まれてきたような人間である。

起床は11時。

服装はダボダボなポロシャツとカーゴパンツに野球の帽子。

食べることと遊ぶこと以外で期待されているのは、自分が興味を持っている課題のみの徹底追求。

評価基準は、どれほど自分の意見を口頭と文章で表現できるか。

ここまで読んでいただければお分かりのことかと思うが、これは日本の大学生生活の話ではない。

佐久沼條治という、ある迷惑男の話

この物語はフィクションであり、主人公である佐久沼條治の名称および性格と立ち振る舞いが作家のものと瓜二つであることは、すべて偶然です。

「絶対、大丈夫」

こう断言した佐久沼條治(さくぬまじょうじ)を、左飛道(さひみち)レヌはあからさまにうんざりした目で見つめた。

「本当ですか」

無駄とは分かっているものの、レヌは一応確認する。

「僕が言うんだから間違いない」

また、だ。この根拠のない自信は何処から来るのだろう、とレヌはいつも思う。

「どうしてそう思うんですか」

レヌは食い下がってみたものの、帰ってきた答えは「僕のカン」だった。

思ったとおりの、何のあてにもならない答え。いまさら期待はしていなかったものの、この日常のやり取りにはさすがに嫌気がさしてきた。

新卒として入社し法務部の佐久沼の下に配属されてまだ半ヶ月しか経っていなかったが、レヌは既にもう、この、自称マンボウのモノマネを特技としている上司に物事を任せておくとヤバイことになりかねないことを学んでいた。

めざせ、高校中退

僕の日本での最終学歴は小学校中退である。この先当分は日本で生活していくことを想定しているのを踏まえ、「高校中退」まで学歴をアップすることを真剣に検討している。

この目標、結構ハードルが高い。何せ、高校受験をする必要があるのだ。

塾と僕と人生

僕は収集癖なので、実家の部屋は高校時代からのレポートだのプリントだのであふれかえっている。整理するのも好きなので、ある程度散らかりがひどくなると、取っておいたものをまとめるのが新たな趣味になる。今年の年明けは暇さえあれば大学とロースクール時代の物を箱に入れて整理していた。ごみといえばごみだが、何せ高い学費を払って得たノートやプリント等々なので数千円の箱に保存する価値のある、高価なごみである。

何でもとっておくので、当然のことながら塾時代のプリントや論文も残っている。僕は小5のときから塾へ通わされた。小学受験の時でさえ大した塾に通わせなかった両親が、受験とは何の縁もない米国現地校に通っている小学5年生のために塾費の出費を覚悟したということは、僕の勉強不足もだいぶ深刻だったのだろう。

今振り返ってみれば、小、中時代は全くといっていいほど勉強をせず、学校は友達に会いに行く遊び場だった。そんな毎日が週三度塾へ通うことによって改善されるわけもなく、僕の塾への態度は授業に座り、適当に問題を解き、宿題はしないというパターンだった。数学は国語より得意だったので比較的まじめにした覚えがあるが、国語の授業には何の興味も示さず、何の努力も注がなかった。
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