“裁判官”として700億円も稼げる「リアリティ法廷番組」は、アメリカの訴訟社会を象徴している(前編)

アメリカで最も裕福な女性を調べると、必ずジュディ・シャインドリン(Judy Sheindlin)という名前が出てくる。5億ドル弱(約700億円)もの資産を持っている彼女は、驚くことに、その財産を裁判官として築き上げた。

もちろん、裁判所で民事訴訟や刑事事件を裁く裁判官としてではない。「ジュディ・シャインドリン(”Judge Judy”)」と呼ばれるアメリカの超人気リアリティ法廷番組の主宰としてである。

このリアリティ法廷番組ほど、アメリカの訴訟社会を象徴している番組はないだろう。

番組の背景と設定は次のようなものである。

アメリカでは、借金を返してもらえなかったとか、家賃を払ってもらえなかったとか、極めて日常的ないざこざでも一般個人が「少額訴訟裁判所(Small Claims Court)」と呼ばれる裁判所で訴訟を起こす。「少額訴訟」と呼ばれるのは、裁判所が命じられる損害賠償金に大抵5,000ドル(約70万円)の上限があるからだ。

少額訴訟裁判所での訴訟は、普通の訴訟と同様に、原告と被告が同意すれば仲裁に付すことができる。仲裁とは原告・被告が指名する第三者に紛争を裁いてもらう仕組みであり、仲裁人による判断は裁判官の判決と同様に法的拘束力を持つ。

リアリティ法廷番組は、少額訴訟裁判所で提訴された本当の訴訟をテレビの前で”裁判官”が仲裁する番組なのである。

そして、この番組は、すべてのステークホールダーにとってウィン・ウィン・ウィンなのだ。

まず、原告と被告。

番組はロスで収録されるが、訴訟はアメリカ中で提訴されている。よって、多くの原告と被告は収録のためにカリフォルニアに行く必要があり、このための旅費と宿泊代は番組側が負担する。

さらに、訴訟自体は内容的に複雑なものではなく、仲裁判断も迅速に行われるので、収録に拘束される時間は極めて短い。”証人”がいる場合は彼らの旅費まで負担されるので、原告と被告にとってリアリティ法廷番組に参加するのは、実質、”証人”である友人や家族と共にタダのロス旅行に行くことを意味する。

「でも仲裁で負けたら損害賠償金を払わなければならなくなるのでは」と思うかもしれないが、実は賠償金も番組側が負担してくれる。よって、原告と被告としては番組に参加しない理由はない。

後編に続く)

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