ナルシストの僕は、常に周囲に対して怒ってる(前編)

ナルシストである僕は、十分と僕に注目しない世間に対して常に怒っている。

たとえば、CM一本に出るだけでギャラを1億円も稼げるらしい元SMAPや嵐のやつらは、僕からしたら井の中の蛙。宇宙の中心的な存在(というか実際に中心にいる存在)である僕に対してCM出演の依頼をしない芸能界の人間に、僕は憤っている。

CMに出るにはどうやらスカウトされる必要があるらしく、芸能界に入ったきっかけは渋谷でスカウトされたことみたいな話をよく聞くので、僕もスカウトされるためにしょっちゅうハチ公付近で漂っている。

ところが、僕には一度もスカウトらしきことが起こったことがない。数年前、ある女性がちょっと離れた所からわざわざ僕に近づいてきたので、「とうとう僕の時代が来たか」とワクワクしていたら、明らかに日本人ではないおばちゃんに一枚の写真と名刺くらいの大きさの紙切れを渡された。その写真に目を落とすと東南アジア人っぽい子供達が写っており、紙には「この子らはカンボジアの孤児院に住んでいる児童です。貧困状態にある彼らを助けるために募金をお願いします」といった説明が綴られていた。

スカウトされてブレイクできると思ってたのに、自分が求められるどころか金を求められたことに腹が立ち、「そんなのはいらねえんだよ」と怒りながら2000円札を渡してその女性を追っ払った。

どうも僕はスカウトされるどころか避けられる傾向にあるようで、これもまた怒りのタネになっている。

渋谷ではしょっちゅう、カメラを抱えた男性を付き添えた女性が、通りすがりの人を捕まえては「街の一般人のインタビュー」みたいなことをしているが、僕は一度たりとも声をかけられたことがない。ある時、これは僕の図体のでかさに怖気付いているからかもしれないと心配になったので、マイクを持っている女性に僕の方から親切に近寄ってあげたら、その人、僕と目線があった途端、カメラマンに目くばせをしてさーと離れていった。これにはだいぶアタマにきたので、「俺を取材しろ」と叫びながら追いかけてやった。

後編に続く)

 

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