いろいろ考えさせられた2020年

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以下は今年のクリスマスカードに同封した手紙です。

本年も残すところわずかばかりとなりましたが、お元気にお過ごしでしょうか。

さて、私の座右の銘は「人生いろいろ」ですが、さすがの私も、映画の世界でしか見たことがないパンデミックを自ら経験することになるとは夢にも思っていませんでした。

こういう未曾有の時こそ、人生について改めて考える機会になるのだと思います。

私は何よりも、このパンデミックを通じて、自分が置かれている状況のありがたさを実感しました。外出が制限され生活に不自由が生じたとは言え、仕事は安全な環境からリモートでできますし、お給料も毎月振り込まれます。しかし、世の中には、そんな余裕がなく、職を失ったり感染リスクに晒されながら現場で働かざるを得ない人が多くいます。

こういう時、私は大学の卒業式で言われた「多く与えられた者は、多く求められる」という言葉を思い出します。パンデミック中でも生活を維持できる私が「多く与えられた者」の一人なのであれば、私にはそれに求められる人生を歩む義務があります。果たしてその期待に応えられる人生を生きれているのか自信はないですが、少なくともその志は忘れてはならないと誓う一年になりました。

さらに、このパンデミックは、自分がどういう人間なのかを省みる機会でもありました。

平時は滅多に家にいない私は、緊急事態が宣言された当初、家でおとなしく読書をしたり将棋の勉強に励むことを試みていたのですが、いつしか、ヘボ料理という新しいチャレンジに挑戦する日々を過ごしていました。さらに秋には、テンプル大学からまた米国憲法を教えないかという話を受け、ためらいなく応じてしまいました。どうやら私はじっとしていられない性格のようです。

加えて、パンデミックは自分の弱さを認識するきっかけにもなりました。

リモートワークが始まった4月以降ずっと自粛していましたが、夏が終わる頃、ふとしたことで、自分にノイローゼの兆しがあることを自覚しました。良くも悪くも、私の生き甲斐は他人との社交と会話にあります。自粛でそれができなくなり、自分を失いかけた時に、助けを求める必要性を感じ、助けを求めればサポートしてくれる人たちに囲まれていることを知ったのは、すごく重要な体験だったと思っています。

こんな大変さがある中でも、時間は過ぎて毎日は続きます。その現実について考えると、感慨深くなります。

やりたかったことができず会いたい人に会えなかった2020年。なかったことにしてやり直したいくらいですが、存在しなかったことにはできません。また、改めて振り返ってみると、人生や自分のことについていろいろと考え、将棋で念願の昇級を達成できたこの1年間をなかったことにするのは、望ましいこととも思えなくなってきました。

来年は、この計り知れないダメージを世界に与えたパンデミックが収束に向かい平時に戻ることを祈るばかりですが、どんな2021年になるにせよ、学びの多い年にしたいと思います。

それでは、どうぞ健康な新年をお迎えください。

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