犠牲にすべき腕時計を、僕はある悪夢から学んだ(前編)

ふと気が付くと、僕は飛行機に乗っている。

機材はボーイング737で、周囲に座っているのは外人ばかり。どうやらこれは、米国内を飛んでいる国内便と思われる。僕が座っているのはエコノミークラスのちょうど真ん中あたりで、前を見ると、ファーストクラスに8人から12人ほど座っている。

目が覚めたきっかけは、そのファーストクラスで起こっている騒動であった。まだ完全に覚醒しておらずとも、それが一大事であることは一目瞭然だった。なにしろ、どでかい男性3人がライフルを持っているのだ。見るからにしてこれはハイジャックである。

にもかかわらず、僕は意外と落ち着いていた。理由は、この出来事がファーストクラスの他人事と受け止めていたからかもしれないし、航空事故検証マニアとして、この状況を冷静かつ客観的に分析することに集中していたからかもしれない。

しかし、そんな余裕も数分後には吹っ飛んだ。ハイジャッカーの二人が大きな袋を持ってエコノミークラスに向かってくるのが見えたからである。各列ごとに止まっては乗客に銃を向け何かを受け取っているところを見ると、どうやら宝石と時計を差し出させているようである。

ここで僕は初めて当事者意識を持った。命より腕時計が大切な僕にとって、これこそ一大事である。

後編に続く)

 
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