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犠牲にすべき腕時計を、僕はある悪夢から学んだ(後編)

そして考えたのが、どうやったら僕の腕時計を救えるか、である。時間があまりない中、将棋では全く活かせない頭がフル回転した。

通常の人は腕時計を一本しか着けていない。いつも腕時計を2本着けてることから変人扱いされることを経験しているため、これは間違いない。

となると、ハイジャッカーもまさか僕から腕時計を2本も回収できるとは考えていないはず。ということは、急いで隠せば1本は救えることになる。

犠牲にすべき腕時計を、僕はある悪夢から学んだ(前編)

ふと気が付くと、僕は飛行機に乗っている。

機材はボーイング737で、周囲に座っているのは外人ばかり。どうやらこれは、米国内を飛んでいる国内便と思われる。僕が座っているのはエコノミークラスのちょうど真ん中あたりで、前を見ると、ファーストクラスに8人から12人ほど座っている。

目が覚めたきっかけは、そのファーストクラスで起こっている騒動であった。まだ完全に覚醒しておらずとも、それが一大事であることは一目瞭然だった。なにしろ、どでかい男性3人がライフルを持っているのだ。見るからにしてこれはハイジャックである。

救ってください、僕を腕時計依存症から

僕は腕時計依存症にかかっている。それも結構重篤だ。

これがどのような病気なのかを知らない人のために、具体的な症状を列挙する。

① 雑誌は腕時計の広告をチェックするためだけにペラペラめくる。

② 大した用事もないデパートに腕時計売場を目当てにふらっと入ってしまう。

③ 銀座腕時計ブティックショップツアーのガイドを務めることができる。

④ 高島屋ウオッチメゾンの何階の何処にどのブランドが置かれているか把握している。

⑤ 鬱陶しい夏の中、唯一と言える楽しみが毎年三越の日本橋本店で開催される「三越ワールドウオッチフェア」である。
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