教師にあらずんば「先生」にあらず

「先生」という敬称の使い方についてふと疑問に思ったことはないだろうか。誰も彼もが「先生」と呼ばれているこのご時世、一体「先生」と「さん」の境界がどこにあるのか、ということを。

僕は「先生」の使い方は二種類あると思っている。

ひとつ目が「教える人」に対して使う場合だ。

これは学校の教師や習い事の先生に限らず、講演で講師を務める人にも当てはまると考えている。よって、いくら有名なアスリートでも通常は「先生」と呼ばれないだろうが、講師として招待される際には「先生」もありだと思っている。

この「先生」の使用は教える立場に伴うものなので、対象となる人の年齢とか社会的地位はあまり関係ない。例えば、若くて世間知らずの大学生であっても家庭教師のバイト中は「先生」と呼ぶ。これは教え子だけでなく、年齢や地位が遥かに上である両親にとっても同じことだ。

もうひとつの「先生」の使い方が尊敬を示す際に使う敬称だ。

医者、弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士などに対しては「さん」ではなく「先生」と呼ぶのが一般的な常識になっているようだが、僕からすると、教える職業に携わっていない彼らに対し「先生」という敬称を使うことに若干違和感がある。

「先生と呼ばれるほどの馬鹿でなし」という言葉を聞くと、教師でない職業に就いているのに「先生、先生」とチヤホヤされてイイ気になっているのであろう人間を思い浮かべる。

以前大手法律事務所で秘書を務めていた人から聞いた話になるが、ある新米弁護士を「〜さん」と呼んだら、「私を「さん」と呼んだのはあなたが初めてです」と言い返されたらしい。「一流高校出身、東大卒の超エリートさんだからなんでしょうね」とその秘書さんは呆れながら語っていたが、僕からするとそいつはただのバカである。僕がその事務所で働いていたら、彼に会う度嫌味たっぷりにさん付けしていたであろう。

とはいえ、世間の常識というものがある。誰もが「先生」と呼んでいる人を若造の僕が「さん」で通すわけにもいかない。さすがに医者、弁護士、公認会計士、税理士あたりに対しては「さん」と呼ぶのは失礼だろうと思っている。

それにしても、「教える人」という客観的に判断できる立場の人以外に対して使う「先生」は主観的すぎる。

祖父は「先生」という敬称を使うことを悉く嫌うが、彼でさえ担当医だけには「先生」を使っている。ところが同じくお世話になっている弁護士や税理士は「先生」に値しないと言い張るので、祖父の拘りがさっぱり分からない。僕からしたら医者も弁護士も似たような社会的地位にいる人なので、理論的に考えれば双方とも「先生」か「さん」のどちらかだと思うのだが。

もっとも、いくら「先生」の使用が主観的であっても、「彼等に対しては絶対使う必要がない」と大抵の人が同意できる職業がひとつだけある。

それは、頻繁に「先生」と呼ばれているのにもかかわらずある日あっけなく「ただの人」に転落してしまう代議士である。

 
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