威張る人間、嫌な人間

僕は偉そうにしている人間が大嫌いである。理由は至って簡単。僕の方が偉いに決まっているから。

最近昔以上に、威張っている人に対して嫌悪を感じるようになった。米国にもそれなりに威張りくさっている人間はいるが、日本の方が肩書きや学歴などを盾に横柄に振る舞うレベルの低い人物が多いようだ。

そんな事は様々な人に出会う機会がある選挙運動を通じてよく感じる。

ある選挙を手伝った時、大きなイベントの際に受付に立って参加者の名刺を受けとる担当になった。その時に出くわしたあるおじさんは、数ヶ月前まで高校生だったであろう若者に鞄を持たせるだけでなく、あごで指図して自分の名刺を出させ、若者に自分の代わりにお辞儀をさせた。

余りにもの傲慢な態度を示すヤツに「てめえ、何様だ」とガンを飛ばそうかと迷っている最中、それを更に下回る男が現れた。

その男、僕の隣で受付に立っていた人に対して、「僕は地元で知られているから名刺を持ち歩かないんだよ」と恥ずかしくもなくほざいたのだ。これを聞いて僕は「名刺がないなら、そもそも何をしに受付に来やがったのか」と問いつめてやりたくなったが、こんな出来損ないにも誠実に対応している隣の人を見て、なんとか自制することができた。

僕の推測するところ、最初の男は地元の中小企業の2代目社長で、次の男は地元では多少は名の知られている代々の地主なのだろう。

社長だかダチョウだか知らないが、いずれにせよ二人とも大した人間ではない。本当に偉い人間は威張らない、というのが僕の持論である。

日本にいる傲慢な人間は何も社長様やお旦那様に限らない。大企業の部長さんぐらいの地位になると、大抵椅子にふんぞり返ってしゃべる傾向がある。

何故日本ではこんなに偉そうに振る舞う人が多いのか、と日本の風習に通じている外国生活が長い日本人に聞いた事がある。彼の説は、日本は若い頃から勉強ができたりするとチヤホヤされる傾向があり、部活や会社等の組織においては上下関係が厳しく、先輩やその他権力を持っている者に対して絶対服従する習慣があるから、というものだった。

なるほど、確かにそうかもしれない。甲子園名門校PL学園の野球部では、自分で自分の面倒を見れないようなダメな人間をつくる「付き人制度」が野球強豪の秘訣とされているし、何よりも、男性が重宝される日本で、今まで出会った横柄な人間が全員男性である事がこの説を裏付けているように思う。

しかし、チヤホヤされる事が横柄な行動をとる人間になるきっかけなのであれば、来日してからの僕も気をつけた方が良い。

僕の職業は米国弁護士。米国では弁護士ほど嫌われる職業は余りなく、社会的に高く評価されるどころか社会問題の一貫として扱われるだけなので、米国に住んでいた時は自分の職に関して特にプライドを持つ事もなかった。

弁護士という職が社会的に尊重されている日本とはその点が大きく異なる。僕が日本で所謂「国際弁護士」という職に就いているのは、何の事はない、ただ日本の司法試験に受からないというだけの話なのだが、それを知らない日本人の多くは、「国際」が付く「弁護士」が何となく偉いという印象を持っているようだ。

そんな環境で「先生」と呼ばれてイイキになり始めている自分が実はいる。このままいくと、自分が最も嫌っている人間のようになりかねないな、と感じることが増えてきた。

というわけで、僕の周囲の人々にお願いしたい。この先僕と一緒にいる時、僕が偉そうに振る舞ったとき、横柄な行動をとった時、そっと囁いて欲しい。

「ジョー、お前は嫌なヤツになった」と。*

  •  なお、この投稿は僕が現在はいいヤツであるとの前提で書かれています。その見解に対して異論がある方は、毎回会うたびに「ジョー、お前は嫌なヤツだ」とわざわざ指摘していただく必要は全くございません。
 

コメントを残す

Translate »