カテゴリー: 法律

弁護士で溢れかえってる米国では、スポーツ業界にまで弁護士が浸透している(後編)

他方、日本の感覚だとなかなか理解しにくいのが、スポーツ業界にいる弁護士資格保有者だろう。

米国では、スポーツ選手の代理人、すなわちスポーツエージェントが弁護士であることが多い。これは一見意外に思えるかもしれないが、代理人の重要な役割は球団との交渉であり、契約周りを法律の専門家が担うのは極めて自然なことである。

弁護士で溢れかえってる米国では、スポーツ業界にまで弁護士が浸透している(前編)

米国では弁護士になりやすい。通常思われているよりずっと。

よって、米国では弁護士資格を持っている人がべらぼうに多い。

どれくらい多いかというと、2023年だけでも、8,000人近くがニューヨーク州の司法試験に、5,000人以上がカリフォルニア州の司法試験に合格している。つまり、たった1年で、13,000人以上の弁護士がたった2つの州から誕生しているのである。日本には合計45,000人しか弁護士がおらず、司法書士と行政書士を加えても国内で法律業務に携わっているのは10万人超なので、日本の感覚からすると、毎年数万人もの弁護士が誕生する米国は極めて異様だろう。

小室圭の事務所プロフィールを、その世界から来たジョーが読み解く

前回は小室圭の就職先であるローウェンスタイン・サンドラー(Lowenstein Sandler)について自分の経験を元に解説したので、今回は当事務所のサイトに掲載されている彼のプロフィールを(つい最近まで類似したプロフィールが公開されていた者として)読み解いていきたい。

【学位】

事務所のプロフィールによると、小室圭は2019年にL.L.M.と呼ばれる学位を、2021年にJuris Doctorと呼ばれる学位を取得している。

L.L.M.とは日本の大学の法学部を卒業した人が米国に留学する際に取得する学位で、1年間で取得できる。L.L.M.を取得すれば多くの米国の州で司法試験を受験できるので、日本企業の法務部社員や日本の弁護士が米国の弁護士資格を保有している場合、学位は大抵L.L.M.だ。

他方で、Juris Doctor(通称、「J.D.」)とは一般の米国人が弁護士になるために取得する学位で、取得するのに3年かかる。

学位がL.L.M.でもJ.D.でも米国弁護士になれるのだが、双方の大きな違いは、前者だと米国本土での就職に大変苦労することだ。その理由は簡単で、一般の米国人はほぼ例外なしにJ.D.を取得するので、法律事務所の採用活動もJ.D.取得者を対象としているからだ。(米国法律事務所の東京支部での就職は事情が大きく異なることに注意)

小室圭は当初L.L.M.プログラムに入り、その後J.D.も取得することにしたようだ。ニューヨークで勤務することを希望していたのであれば、これは賢明というより必須の決断であったと思われる。

小室圭の就職先を、その世界から来たジョーが解説

小室圭がニューヨークの法律事務所に就職したという報道があったのでググってみたら、なんと就職先はローウェンスタイン・サンドラー(Lowenstein Sandler)法律事務所ではないか。

ローウェンスタインは僕が内定をもらっていた事務所。最終的に辞退したが、ひょっとしたら小室圭の先輩になっていたかもしれないと思うと、「小室圭文書パロディー」なんてものを書いたことをちょっと反省している。

僕の経験上、ローウェンスタインはなかなかの事務所である。つい最近まで小室圭が飛び込んだ世界にいた者として、彼の今の境遇を解説してみようと思った。

僕は府中刑務所に住みたいと思ったことがある(後編)

刑務所はホテルではない。クレジットカードではなく有罪判決を提示しないと宿泊させてくれない場所である。

さらにややっこしいことに、日本には執行猶予という処分がある。この中途半端な判決を食らうと、前科はあるが入所はできないという、最悪の状態に陥ってしまう。

僕は府中刑務所に住みたいと思ったことがある(前編)

こんなツイートを発見。

この人、拘置所とは知らずに住みたいと思っただけマシである。僕なんぞは、刑務所と分かってて住みたいと思ったことがある。

自己破産した者の弁護士になる資格とは

「永田町の常識は、世間の非常識」と良く言われるが、弁護士の世界の倫理観も世間からは理解されにくいところがあるのではないかと思う。

たとえば、自己破産が弁護士への道の妨げになるとは普通は考えないだろう。

でも米国のミネソタ州では、司法試験に合格したにもかかわらず自己破産した過去が問題視されて弁護士になれなかった人物がいる。

殺人を犯した者の弁護士になる資格とは

最近ある医学生から、「人身事故を起こすと医者になれなくなっちゃうので、自動車運転をしないんです」というような話を聞いた。

その時は、なるほど、生命を救うべき立場になる人が他人に害を与えてはいけないな、と納得したのだが、その後これが弁護士だったらどうだろうか、と改めて考えてみた。

人間誰しも悪意がなくても過ちを犯してしまう。良いことと思ってやったことが裏目に出たり、うっかりミスが数億円の損害につながったりする。自動車運転においては、赤信号を無視してきた車に突っ込んで相手の運転手を死なせてしまったりする。

そういった過失責任がなさそうな場合でさえも日本では医者になれなくなってしまうのか定かではないが、米国弁護士について言えば、殺人を犯した者でも弁護士への道が閉ざされてしまうわけではない。

外国法事務弁護士という、日本の弁護士社会への裏口入学

僕は「外国法事務弁護士」、通称「外弁」と呼ばれる資格を有している。これは俗に言う「国際弁護士」に最も近い正式な国家資格なのだが、大きく名前負けする資格でもある。

外弁がどういった資格であるかというと、これは海外の弁護士資格を保有している者が日本で活動するための資格である。言い方を変えると、僕のような日本の司法試験には到底受からない者が、日本国内の日本人・日本企業向けに、大半の日本人・日本企業にとっては何の縁もない外国の法律に関する法的アドバイスを提供するための資格だ。当然のことながら需要はあまりない。

「海外の弁護士資格」というと聞こえはいいが、僕の場合、これは米国のニューヨーク州とニュージャージー州の弁護士資格を指す。はっきり言ってそれほど感激するほどのものではないのだ。

新たな一歩

急な報告になりますが、私は5月13日付で現在勤めている法律事務所を退所させていただくこととなりました。

振り返ってみれば、つくづく恵まれた7年半でした。

納得しがたい、逆転無罪判決。

痴漢事件で防衛医大教授に最高裁が逆転無罪を言い渡した。なんとも納得しがたい判決である。前置きしておくが、あくまで弁護士の考えとして原判決を覆した法的論法に納得がいかないのであって、教授がわいせつを犯したか犯していないか、冤罪だったか、という事実に関しての考えはない。

5人が審理し、3対2という小差だった。全員が意見を述べるという稀な判例で、割と短く簡潔で、僕でも分かる日本語を使っているので、興味のある人は全文読める。

判例をざっと要旨すれば、公訴によると被告人は満員の電車の中、乗客であった17歳の女性に悪質なわいせつ行為をした。被告人は一貫して犯行を否認。物的証拠もないことから、公訴事実を基礎付ける証拠は女性の供述しかない。最高裁は女性の供述の不自然さ、不合理さを指摘し、信用性に疑いを投げかけ、判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認があったという理由で原判決を破棄している。

言うまでもなく、「疑わしきは被告人の利益に」は刑事裁判の原則であり、それを最も反映しているのが有罪判断に必要とされる証明基準、「合理的な疑いを超えた証明」である。主文、補足、反対意見すべてこれは問題視していない。
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