新たな一歩

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急な報告になりますが、私は5月13日付で現在勤めている法律事務所を退所させていただくこととなりました。

振り返ってみれば、つくづく恵まれた7年半でした。

そもそも私がロースクールに進んだのは、大学で興味を持った憲法について勉強を続けてもいいかなという軽い気持ちからで、卒業後就職する必要があるという事実には全く思いが至っておりませんでした。

企業弁護士という職業に就けたのは成り行きで、面接の準備にてんやわんやしている同級生を見て後れを取ってはならぬという、志願理由などないただの危機感から自らも面接を始めてはみたはものの、そんな中途半端な就職活動が上手く行くはずもなく、多少できた日本語を評価してくれたシャーマンアンドスターリングから内定を貰えたこと自体が、そもそも奇跡的でした。

そして入所後は、仕事の内容と職場に恵まれました。

支援するクライアントは、日本人なら誰でも知っている優良企業。

携わる案件は、日経新聞の一面を飾るようなもの多数。

勤務姿勢は、数年の経験と知識を基に、好き勝手にやりたい放題。

何よりも、優秀な上司に信頼され、勤勉な部下に支えられ、人柄の良い同期に囲まれ、人間関係に恵まれてきました。

週末の出勤は当たり前で徹夜もたまにありましたが、ここまで良い条件が揃っているのに苦情を漏らすとバチが当たる、とはいつも思っていたことです。

それなのになぜ辞めるのか。

一言でいうならば、「そろそろ潮時かな」と感じたからです。

外資系大手総合法律事務所勤務というのは特殊な職業です。たまには過酷ともいえる勤務環境はさておき、入所してたった数年で将来、すなわち経営陣(パートナ)になること、についての話が挙がります。7年を過ぎればそろそろ意志を示すよう促され、9年過ぎれば腹をくくる必要があります。何も知らずに入った世界とは言え、社会人として軌道に乗り始めたころ自分の残りの生涯の生き方についての判断を迫られるとは、今更ながら異様な世界に紛れ込んでしまったものだと思います。

最終的に、私には今の道をキャリアにするという判断を下すことはできませんでした。他にやりたいことがありすぎるから。

この仕事は及び腰では到底やっていけない。そうであることは十分に認識していたので、楽しくても、今満足していても、辞めるべき。そう考えた次第です。

正直、とても複雑な心境です。

この7年半、とても恵まれましたが、最も恵まれたのは、花道を準備して、辞める決断を促してくれた元同僚の存在だと思います。

5月16日から、私は某大手IT企業に移籍します。そして、仕事のできぶり、人格のいずれにおいても尊敬する元同僚と共にまた仕事が出来ることになります。

お堅い法律事務所からIT企業。証券法から契約のレビュー。外部へのアドバイスから自社事業拡張への貢献。

何もかもが新しい、次の一歩となります。

S様、長い間大変お世話になりました。

IT様、これからお世話になります。

すべてが楽しみ、待ち遠しいです。

カウントダウンは始まっています。

 
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