「その時・その瞬間」は学校や仕事よりずっと大事(後編)

前編から続く)

僕が好きな洋画はカントリー・ミュージック。これは米国南部なら抜群の人気を誇ってるジャンルであるが、ニュージャージー・ニューヨーク周辺では、からっきし人気がない。このエリアにはカントリー・ミュージックに特化したラジオ局が1つしかなく、それも新しいラジオ局が立ち上がっては18か月で消えるというサイクルが繰り返される悲惨さだった。

だが、そんなニュージャージー州にも、カントリー・ミュージックのファンはいた。なので、人気ある歌手ならたまにコンサートをしに来てくれた。そして、僕がロースクールに通っていた時、最も好きな歌手だったブラッド・ペイズリーがニュージャージーでコンサートを開いた。

その貴重なコンサートの日は、期末試験の真っ只中。それも、前の試験と次の試験の合間3日間のど真ん中。

当時の僕はロースクール1年生で、卒業後の就職のためにも、いい成績を取るのが極めて重要な年だった。他方、コンサートの2日後だった試験は、当時から最も得意だった米国憲法であった。

僕はこの時、悩みに悩んだ。勉強時間をより多く確保するに越したことはない。でも、米国憲法なら2日あれば十二分だろう。だが、期末試験期間中に気を緩めたくない。

こんな風に自問を繰り返した挙句、僕はコンサートに行くのを見送った。

この判断は、一生後悔すると思う。

僕が取れた成績を踏まえると、成績が1つ、もしかしたら2つ下がったとしても、コンサートに行くべきだったのだ。まさに、一期一会。「その時・その瞬間」は一度しかなく、それは成績なんかよりずっと価値が重い。

僕はコンサートより試験を優先した失敗を省みて、たった数年前、学問よりアメフトを優先した成功を鮮明に思い出し、もう2度と同じような過ちは起こすまいと誓った。

僕はお世辞にもサッカーファンとは言えない。だが、ワールドカップの日本代表戦は人生で大事にしなければならない「その瞬間」に該当するイベントであることくらいはわかる。試合を観ながら感じた感動や悔しさと、その日にあった授業や打ち合わせのうち、どっちを数年後覚えているかと言われたら、答えは明確だろう。

であれば、学校や仕事をさぼってでもワールドカップの試合を観るべきなのだ。

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