時計も食事も身の程をわきまえたい(後編)

前編から続く)

思い出すところ、その店で恥をかいたのは2回目であった。

1回目は、まさに現在恩着せがましく店員に見せつけている時計を購入した時である。

その時の僕は、これが生涯で最も高い買い物の一つになるという自覚があったものの、それが実際にどういうことを意味するのかの実感を持っていなかった。よって、震えながら「この時計を購入します」と店員に伝えながらも、いつものようにカードを渡して会計を済ませるつもりだった。

カードには利用可能額という上限があることをすっかり忘れていることに気づかずに。

購入したウブロはそれまでの買い物とは桁違いだった。よって、当然のこととして、カードは拒否された。複数のカードを組み合わせればなんとか枠内に収められるかと思ったのだが、分割してもすべてのカード会社から拒否を食らった。

情けない思いをしながら店員の前でカード会社に電話し上限を上げてもらおうとしたものの、こういう時に限って連絡が取れず、もはや僕に残された唯一の選択肢は、払えるだけの金額を払って時計だけ抑えてもらい、後日残高を支払いに戻ってくることだった。

えらい恥をかいて、この時僕は誓ったはずだった。以降、身の程をわきまえた行動を取るようにしよう、と。

それなのに、未だに僕は、腕時計依存症にかかってしまうほど腕時計を買い続け、たらふく食べられない高級レストランに入ってしまう。

なんとかならないものだろうか。

 
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