高校の人気投票で健闘した僕は、卒業式でスピーチをする羽目になった(後編)

前編から続く)

先生の1票の方が圧倒的に同級生の1票より重い。肝心の先生票ではどうみても出木杉くんの方が優勢で、僕はホームルーム票を総取りするくらいでないと勝ち目がなかった。その点、人望がある首席くんが立候補しなかったのは痛かった。彼がいればエリート票が割れ、庶民の票を固めた僕が出木杉くんをホームルームで上回る可能性が高まったのに。

そして、卒業式が数週間後に迫ったある日。立候補した3人が校長に呼び出され、意外な結果を伝えられた。なんと、出木杉くんと僕の両方がスピーチをすることになったのだ。

校長の説明によると、先生票もホームルーム票も同じ結果で、出木杉くんが僅差で僕を上回っていた。ただ、あまりに僅差だったので、慣習を破り、2人ともに話をしてもらうことになったらしい。

これを伝えられた時の僕は、複雑な心境になった。

まず、自分の票読みが概ね正しかったことの満足感。ホームルーム票を勝てなかったのは残念だったが、首席くんが立候補しなかった時点で、それは想定されることだった。

次に、先生票で接戦に持ち込めた達成感。ピエロでも結構先生に好かれることがわかり、「僕、意外と人気あるじゃん」といい気になった。

そして、何より、困惑と恐怖。なにせ、僕は自分の人気を把握するために立候補したのであり、卒業式でスピーチをしたかったわけではない。

だが、立候補していながら辞退するわけにいかず、同級生の親御さんの前で恥かくことは避ける必要があったので、僕は投票結果が伝えられて以降、したくもないスピーチのプレッシャーに押しつぶされそうになった。

こうして僕は、自分が思いのほか学校で人気があることをせっかく確認できたのに、卒業日まで苦痛の日々を過ごす羽目になったのである。

 
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