歴史に残りそうなエア・インディア171便墜落事故(前編)

とても不謹慎なことではあるが、最近の僕の関心はもっぱらエア・インディア171便墜落事故にある。どうもこの事故は、史上最も有名な事故の一つになりそうな予感がするのだ。

飛行機事故にも様々あり、「またこれか」といったものもあれば、「これは珍しい」といったものもある。2024年1月2日に羽田空港で起こったような滑走路衝突は10年に1度くらいの頻度で起こる事故なので、実は前者に当たる。

他方、先日公表された報告書によると、今回の事故はエンジン燃料制御スイッチが切れていたことが原因。飛行機事故検証マニアである僕でさえ「エンジン燃料制御スイッチ」というものを聞いたことがなかったので、これは大変珍しい「前代未聞の事故」となりそうだ。

過去の飛行機事故に詳しくなると、墜落状況を見るだけで事故の原因が絞れるようになってくる。

例えば、地面に落ちている飛行機の破片が広く散らばっていれば機体が空中分解しているので爆弾が視野に入るが、狭い面積に集まっていれば機体が一体のまま墜落したので爆弾は排除できる。

今回の事故では墜落直前の動画まで残っており、この滅多にない証拠から更にわかることがある。

動画を見ると、飛行機は離陸できたものの高度を上げられず、まるでグライダーのように徐々と高度を落としながら墜落している。こういった現象は、基本、揚力が不足している時に起こる。そして、揚力不足の場合に最初に思い浮かぶのはフラップの出し忘れだ。

「フラップ」とは飛行機の主翼後縁部にある可動翼片を指し、低速飛行でも揚力を維持するための装置である。離陸と着陸においてフラップを展開しておかないと、飛行機は失速状態に陥って確実に墜落する。フラップ展開は離陸に不可欠であるにも関わらず、パイロットは恐ろしい頻度でこれを失念する。1987年のノースウエスト航空255便墜落事故1988年のデルタ航空1141便墜落事故1999年のLAPA 3142便離陸失敗事故2008年のスパンエアー5022便離陸失敗事故などが典型例だ。

従来はチェックリストの強化や警報を鳴らすことでフラップがちゃんと展開されることを担保しようとしていたが、今回墜落したボーイング787はボーイングの最新機材であり、離陸時にフラップが展開されてないと自動的に展開される設計になっている。

それでもなお僕は何らかのパイロットミスか機材の不具合でフラップが展開しなかったことを疑ったのだが、唯一の生存者が「離陸から間もなく客室内の明かりがちらつき始めた」と証言したことで、この事故の原因はエンジン関連であろうと考えを改めた。飛行機の電力はエンジンが回転することで供給されるため、照明が消えたというはエンジンが駆動していなかったことを強く示唆するのだ。

後編に続く)

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