超人気テレビ番組「ジャッジ ジュディ」のジュディ・シャインドリンと僕の最初の上司は、楽に仕事をしたがるアメリカの裁判官としては異例(後編)

前編から続く)

僕はロースクール卒業直後、彼の元で裁判官の助手(law clerk)を務め、当時の勤務時間は公務員の標準である8:30~16:30と規定されていた。だが、面接の時、冒頭に「私は5:30に出勤するので、君には7:30までに来てくれないと採用できない」と言われ、まさか「イヤです」とも答えられなかったので、毎日かっちり7:29に出勤する羽目になった。さらには、上司は18:00まで仕事をしていたので、後から出勤した僕は先に帰るわけにもいかず、いつも帰宅は19:00頃だった。

そんな彼は、部下の僕だけでなく、出廷する弁護士にも同じ勤勉さを求めた。彼のスケジュールは何ヶ月先まで埋まっていたことから、弁護士が緊急・特別対応を求めると、「祭日なら空いてるけど」と普通に回答していた。

これは決して脅しで言っていたのではない。ある時、どうしてもスケジュールが合わない訴訟があった時、彼は関係者全員(僕、弁護士、原告、被告)に次の祭日に出廷するよう命じた。アメリカの裁判官は小さな国の君主で、閉廷であるはずの日に開廷させるという無茶が通用してしまうのである。

僕の上司は、「迅速に処理することが正義」と考えている人だった。彼は案件を前進させない弁護士やだらだら話す弁護士に容赦がなく、法廷で異論を唱え続ける弁護士がいると、「他に言いたいことがあるなら、17時以降に戻って来ればいくらでも発言させてあげる」と言って弁護士による発言を打ち切っていた。

シャインドリンも「60ミニッツ」の取材の中で同じようなことを言っている(10:00〜)。これを見た僕は、もしかしたら僕の最初の上司もリアリティ法廷番組に出演していれば有名人になれてたかもしれないと思った。

でも、あの人はそんなことには関心がなかったのだろう。彼は何より、社会を良くしていくことに裁判官としてのやりがいを見出していたので、リアリティ法廷番組に出れば儲かったかもしれないが、仕事に対する満足感はだいぶ軽減していたに違いない。

彼は自分が設立した中堅事務所を退所して裁判官になった人である。収入が半減するので家族に猛反対されたらしいが、そこまでしてでも社会貢献したいと考えていたからこそ、僕は彼を尊敬している。

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