アホに対して正義を下すのが魅力のリアリティ法廷番組「ジャッジ ジュディ」(後編)
(前編から続く)
2つ目の件は子供の死が絡んでおり、通常よりずっと重い内容の訴訟だ。
背景はこうである。
女性Cの家に女性Dの14歳の娘が遊びに行った。Cは常に車の中に鍵を入れっぱなしにしており、未成年の息子がたまに運転することを許容していた。事故があった日、Cの息子を乗せた車をDの娘が運転していたら、車が転覆してしまい、Cの息子は無事だったものの、Dの娘は即死してしまった。
すると、CはDに対して、Dの娘の行為によって車が破損した責任を問う損害賠償金を求めて訴訟を起こした。強調するが、訴えたのは娘を失ったDの方ではなく、車が破損したCの方である。訴えられたDは逆に、Cに対して自分の娘の死に対する責任を問う、いわゆる不法死亡訴訟(wrongful death lawsuit)を起こした。
上記の事実関係で訴訟を起こすCのあまりの非常識さに、シャインドリンは激怒。「あなたは、Dに対して『私が車に鍵を入れっぱなしにしてたせいで、私の車の中であなたの娘は死んでしまった。申し訳ありません』と謝るべきところを、車への損害賠償を求めて訴訟を起こしたのだ。あなたはアホだ!」こう言い放ち、シャインドリンはCの訴訟を棄却してDの逆訴訟を満額で認めた。
Cは最後までDが損害賠償責任を負うべきだと考えていたようである。そんなズレてる感覚に対してバッサリ言い切ったシャインドリンにスタジオにいた観客は拍手を起こし、テレビの向こうの視聴者も同じ気持ちだっただろう。
裁判官が法廷で原告や被告に対して「アホ!」と叫ぶのは礼儀作法として適切ではない。だが、世の中にはアホと呼ばれるべき人物も少なからずいる。「ジャッジ ジュディ」は、本当の裁判でやってもらいたいけどできないことをテレビの前でやってくれるところに、面白さがあるのだろう。