ゼロ金利の弊害、WeWork(前編)

僕は金融危機のニュースを追うのが好きである。銀行の破綻とか大企業の粉飾とかのニュースからは目が離せない。

近年、そんな僕の関心を最も引いたのがWeWorkである。

WeWorkは2023年11月に経営破綻したが、その頃には世間から既に忘れられており、話題になっていたのは4年前に会社が上場しようとして失敗した時である。

WeWorkのIPO失敗ほど、10年間続いたゼロ金利政策の弊害を象徴している出来事はなかった。

WeWorkのビジネスモデルはそんなに難しいものではない。長期賃貸契約で借りたオフィスを分割して短期賃貸契約で貸し出すビジネスモデルは昔から存在する。IWGが業界の最大手であり、この会社のブランドであるRegusのシェアオフィスを使ったことがある人は多くいるだろう。このビジネスはどう考えても不動産業である。

ところが、WeWorkの創業者であるアダム・ニューマンは自社をIT企業であると宣伝し、それに乗せられた孫正義はWeWorkにIT企業規模の470億ドル(約7兆800億円)の企業価値を付けて出資した。

このような愚かな投資を可能にしたのは、リーマンショック後に世界諸国の中央銀行が導入したゼロ金利政策に他ならない。ゼロ金利により誰も彼もが資金を安く調達できるようになり、溢れた現金の使い道に困った投資ファンドは、デューデリジェンス(調査)もビジネスモデルの審査も行わずにスタートアップに資金をつぎ込んだ。

その結果がどうなるかなど、目に見えていた。スタートアップに潤沢すぎる資金を渡すと、不動産屋のWeWorkが屋内ウェイブプールの製造や小学校の運営に手を出したように、資金の無駄遣いが増長され、節度がなくなり、やりたい放題するようになってしまうのだ。

後編に続く)

 
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