ジョーの人生の方式(後編)

前編から続く)

徹夜と言えば、カラオケを思い出す。前職での最も懐かしい思い出は、朝4時まで同僚とカラオケで歌いほうけたこと。救いようがないほどの音痴でも、ここまで歌うことが好きなら睡眠<音楽と言えるだろう。

ちなみに、僕の好きな歌手はブラッド・ペイズリーという。カントリー・ミュージック歌手であるペイズリーは主に米国南部で活動しているが、ロースクール時代、東北のニュージャージー州まではるばるやってきてくれたことがあった。ところがその時ちょうど期末試験期間中だったため、僕はコンサートに行かず、おとなしく家で米国憲法の勉強をしていた。この勤勉な選択から僕の優先順位はあたかも音楽<憲法であるように見えるが、あの時、成績を一つ下げるくらいで済むならコンサートに行くべきだったというのが人生三大後悔の一つなので、実は憲法<音楽。

音楽は芸術に含まれるだろうが、僕は芸術については才能がない、分からない、よって興味がない、のダメ3セットである。しかし、音楽と映画については少なからずとも関心があり、関心を持つと理解が深まるはずで、僕は明らかに音楽より映画の方が詳しいので、理論的には音楽<映画であるはずだ。

では、左脳的な将棋はどうか。NHK将棋は、人間が起きているべきではない日曜日の朝という時間に放送されているので、僕はこれを見たことがない。他方で、自ら課しているiPhoneアプリ「将棋ウォーズ」の一日3局のノルマは、睡眠不足で頭が朦朧としている夜中の1時から3時の間に励んでいる。よって、将棋=睡眠と言えるか。

今のところ僕の「大切なもの」はすべて睡眠より大事または睡眠と同等になっているが、果たして睡眠ほど重要ではないものはあるのか。

もちろん、ある。

まずは、神様だ。土曜日に夜更かしをすると、10時台に起きなきゃ間に合わない日曜日午後12時のミサは平気でパスする。しょっちゅう夜更かしをする僕は大分罪深い男である。

もっとも、罪悪感というものは一応持っており、朝のミサに出なかった日は、歩行者天国の銀座で腕時計ブティック店巡りをするといった行為を避けるようにしている。ということで、流石の僕でも、腕時計<神と、一定の節度ある優先順位を保っている。

さらに、僕はどうやらフライトシミュレーターより睡眠を優先する性格のようだ。最近の海外出張で、突拍子もない時間の成田発か普通の睡眠がとれる羽田発の便の選択肢があった。羽田空港国際ターミナルのフライトシミュレーターは全くイケてないのでシミュレーター重視なら当然成田発を選ぶべきだったが、悩んだ挙句、出した結論は飛行機<睡眠だった。

他方で、全く悩まないのが読書<睡眠である。僕にとっての読書は、移動時間や待ち時間の暇つぶしであり、所詮はただのエリートになるための手段だ。漫画でもない限り、徹夜してまで読書することはない。

そして最後に残るのが食事。

僕には就寝の2時間以内にものを食べないという鉄則があるので、食事<睡眠と考えることもできる。しかし、それだと食事より映画や将棋やボストンカレッジの方が重要になり、僕をよく知っている人なら、「それはありえん」と反論しそうである。

確かに、就寝2時間以内に何も食べないからと言って食事より睡眠を優先しているとは限らず、よくよく考えてみたら、食べ過ぎで腹が痛くなり食後4〜5時間寝れないという事態が頻繁に起こっているのであった。これは明らかに睡眠<食事を意味しており、アメフトの観戦にも、必ずピザやらバッファローウィングやらのアメリカンジャンクフードが伴う。

以上を纏めると、僕の人生はこんな方式になる。

僕が言うのもなんだが、こんな方式の人生を生きててよいのだろうか。

 
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