とある宿泊客がニューヨークの老舗ホテルを乗っ取ろうとした法律っぽい話(後編)

前編から続く)

ところが、バレットーはこれだけでは満足しなかった。

翌年、彼はザ・ニューヨーカーが自分に譲渡されたとする証書を偽造し、2019年5月、ホテルの譲渡をニューヨーク市の不動産登記簿システムに登録してしまった。不動産の登記においては、証書の信憑性が審査されず、登録のための要件が満たされているかが形式的に確認されるだけなので、登録を申請すれば受理される可能性が高いことをバレットーは知っていたのだと思われる。

こうして登記に成功したバレットーは暴走した。ニューヨーク市が管理しているホテルの下水道契約名義人を自分に変更し、ホテルの取引銀行に対して口座名義を自分に変更するよう求め、ホテルの施設内に入っている飲食店に対して家賃を自分に支払うよう要求した。

ここまでくると、バレットーは完全に詐欺を犯している。そしてここにきて、ホテル側もさすがに事の深刻さに気づいた。ホテルは直ちに訴訟を起こし、登記の登録から5ヶ月後の2019年10月、裁判所は譲渡証書が偽造であると認定したうえで、所有権が旧統一教会にあることを確認した。

この事件の一番すごいのは後日談である。バレットーが最終的にホテルの2565室から強制退去させられたのは2024年であった。バレットーはなんと、ホテルの所有権に関して決着がついてから4年以上、最初にチェックインしてから6年近く、ニューヨーク市の一等地にあるホテルに総額たった200ドルで住み続けられたのだ。

この事件はいろんな意味で、最初から最後まで、米国でしか起こらないであろう出来事だった。

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