アメリカの大学スポーツに対する感覚では、日大のアメフト部廃部は考えられない(後編)

前編から続く)

卒業してからは、チームの成績が悪ければ監督の解雇を求める地元の新聞に賛同し、新しい監督に年間1億円しか支払われないことを知ると、ケチったことで知名度が高い監督を起用できなかったことに憤った。

僕は決して熱狂なファンではない。母校チームの成績も良い年で勝率5割だ。それでも、アメフト部が廃部されれば、毎年行っている大学への寄付を確実に止めるだろう。

僕でさえボストンカレッジのアメフトチームに対してこんなに思い入りがあるのだ。アラバマ大学のように年々全国優勝を競っている強豪チームが廃部ともなれば、もはや在学生や地元のファンの間で暴動が起こっても不思議ではない。

こうしたアメリカの大学スポーツに対する感覚からすると、選手が違法薬物を保有していたくらいでアメフトチームが廃部されるのは理解しがたい。

ボストンカレッジは1990年代に、アメフト選手の数名が、自分が出ていた試合で相手のチームに金を賭けるというスキャンダルを起こした。これはスポーツ・インテグリティを本質的に脅かしかねないスキャンダルだったが、その時でさえ、チームの廃部が議論に上がることはなかった。

多くのアメリカの大学では、アメフトは大学生活に欠かせない存在である。「所詮はスポーツ」などと片付けられるものではなく、誰しも(ましてや在学生や卒業生は)アメフトを「教育の一環」であるとは考えていないだろう。アメフトが教育なら監督は教育者だが、110億円を支払ってまで教育者を解雇する学校(それも公立大学)は世界に存在しない。

日大のアメフト部廃部事件は、日本とアメリカでの大学スポーツの位置づけの大きな違いを象徴してるように思えてしょうがない。

 
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