イチローの偉大さを振り返る

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イチローが現役引退を表明した。メジャーリーグ19年、プロ野球時代を含むと28年にわたるキャリアに終止符を打つ。

イチローが史上最高の日本人野球選手の一人として名を残すことは間違いないが、彼が松井秀喜、ダルビッシュ有や大谷翔平など他のメジャーリーガーと一緒に語られるのを聞くと、彼の本当の偉大さがまだまだ十分認識されていないのではないかと思ってしまうことがある。他の日本人メジャーリーガーには失礼ながら、誰一人としてイチローとは比較に及ばない。

イチローとはそれほど比類ない別格の存在なのだ。それはイチローが持っている数々のメジャーリーグの記録を見れば明らかである。

米国の野球は140年もの歴史を誇る。その由緒ある記録をひとつ塗り替えるだけでも偉業であるが、イチローは史上1位か1位と並ぶ記録を少なくとも11個も持っているのだ。

  • シーズン安打(262本)
  • シーズン200安打回数(10回)
  • シーズン200安打連続年数(10年)
  • リーグ最多安打連続年数(5年)
  • 左打者シーズン安打(262本)
  • 新人安打(242本)
  • シーズン安打試合数(135試合)
  • 左打者シーズン打数 (704)
  • 代打シーズン打数(100)
  • リーグ最多打数回数 (8回)
  • リーグ最多打数連続年数(5年)

[出典~Baseball Almanac]

この中には目覚ましいものが含まれている。シーズン200安打の10年連続およびリーグ最多安打の5年連続はいずれも2位に2年の差をつけており、シーズン200安打の10回達成はメジャーリーグ通算安打記録保持者であるピートローズと並ぶ。

しかし、数々の記録の中でも最も驚愕的なのは、やはりシーズン安打数である。

実はこの記録、2004年にイチローが塗り替えるまでほぼ忘れられていた。それもそのはず。それまでの記録は、ジョージ・シスラーと呼ばれる選手が1920年に達成した257本だった。1920年といえば、ストライクゾーンがもっと広かったりプレイのスタイルが違ったりと、野球というスポーツが根本的に現在と異なっていた時代である。シーズン安打の記録はホームランやセーブとは違い、近代選手が破れる記録ではないはずなのだ。その証拠に、シーズン安打数のトップ10位はイチローを除くとすべて1930年以前に達成されている。(ちなみに、イチローはトップ10位に2回も現れる)

イチローのメジャーリーグ通算安打数は3089本で史上23位。プロ野球時代の1278本を加算した通算安打数の4367本は世界記録だ。その他、新人王、最優秀選手賞、首位打者2回、ゴールドグラブ賞10回などの受賞歴を踏まえると、イチローのアメリカ野球殿堂入りは確実なだけでなく、殿堂入りの資格を初めて得る2025年に、史上56人しかいない所謂「First Ballot Hall of Famer」としての入堂が期待できる。史上2人目の投票者全員一致による入堂の可能性もある。

僕はニューヨーク州クーパースタウン市にある野球殿堂に、少年時代に一度だけ行ったことがある。そこには、ベーブ・ルースルー・ゲーリック、そしてジャッキー・ロビンソンなど、19世紀から野球の歴史を築き上げてきた者が祭られている。まさに神殿と表現するのが相応しい、神聖なオーラが感じ取られる場所だ。

その時の僕は、そんな聖地に日本人選手が仲間入りできるとは思っても見なかった。実際、今後イチロー以外の選手が殿堂入りできるとは思えない。

だから僕は、イチローが殿堂入りを果たす時にクーパースタウンに戻ってみようと思う。数世代に一度の出来事を目撃するために。

 
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