航空事故を生き延びるための三つの秘訣

この投稿は航空事故について書いています。飛行機が苦手な人、飛行機で怖い体験をされた人は読まれることをお控えください。

不謹慎であることを承知で認めるが、僕には航空事故の検証という変わった趣味がある。

趣味のきっかけとなったのはカナダのドキュメンタリー「メーデー!:航空機事故の真実と真相」。この番組が今年で17シーズン目を迎えることからも分かるとおり、航空事故が興味深いと考えるのは何も僕だけではないのだ。

僕の「メーデー」へのはまり用は異常で、購入した全シーズンDVDセットがオーストラリアリージョンに限定されていたため、このDVDを観るだけのためにリージョンフリーのDVDプレイヤーを入手している。

航空事故の話をすると特に出張の時など周囲に嫌がられるのだが、「メーデー!」から学んだ「飛行機事故を生き延びるための三つの秘訣」に関する話が実は僕がする無駄話の中で唯一ためになった話、と言われたことがあるので、是非ここで紹介したいと思う。

秘訣1〜シートベルトは常時着用

航空事故とは思いの外生き残れるものなのだ。

いくら荒くても気流が事故につながることは滅多にないし、30,000フィート(9,100メートル)を2分半で急降下した事故でも大怪我人は出ない(中華航空006便)。

それだけでなく、ドア(ユナイテッド航空811便)や窓(ブリティッシュ・エアウェイズ5390便)が吹き飛んだだの、外壁が破れてオープンフライトになっただの(アロハ航空243便)、機体が破損するような大事故でも、多くの乗客と乗務員が助かる。

ただ、助かるにはシートベルトの着用が必須である。

シートベルトを締めていないと、乱気流に突入しただけで怪我をしかねないし、機体に穴が開いたら急減圧が発生し吸い出されてしまう。

紐を結ぶ程度で大抵は助かるので、僕は飛行機が出発ゲートを離れてから到着ゲートに着くまでベルトを外さない。

秘訣2〜最も近い出口を確認

あまり知られていない事実だが、どのジェット機も90秒以内に片側から全員が脱出できるように設計されている。これは反対に、90秒以内に脱出しないと生存率がぐんと落ちる、という考え方もできるということだ。

緊急着陸した場合、問題となりかねないのが火事と煙だ。

煙というものは恐ろしもので、濃くなると一寸先も見えなくなってしまうらしい。過去に、緊急着陸後、乗客が床を這いながら脱出を試みたものの、出口に気づかず通り過ぎてしまい、多くがそのまま窒息死してしまったという有名な事故がある(ブリティッシュ・エアツアーズ28M便)

せっかく緊急着陸できたのに脱出し損ねてしまうといった幸運中の不幸だけは避けたいので、僕は着席直後に必ず前後を見渡し、一番近い出口を頭に入れておく。

秘訣3〜救命胴衣の紐は引っ張らず

「着水します」というアナウンスがあった時点で生存率は5割未満なので腹をくくったほうがいいが、着水できるのであれば生き残りたいものである。

そこで重要な役割を果たすのが救命胴衣だ。

大半の人は救命胴衣の膨らませ方を知っていると思うが、実は膨張させるタイミングが極めて重要なのだ。

当たり前だが、飛行機が着水しても機内から脱出する必要がある。飛行機は一定の期間浮くように設計されているが(USエアウェイズ1549便)、着水する際に機体が大きく破損する可能性が高いので、 この特性はあまりあてにならない。

ということは、脱出するためには一旦水中に潜る必要があるのだが、着水する前に救命胴衣を膨張してしまうとこれが不可能になり、脱出できずに機体と共に水底に沈んでしまうことになる。

よって、「着水します」というアナウンスがあったら、まずは落ち着いて、紐を引っ張ってはいけないことを思い出すことだ。

これら三つの秘訣を読んでお気づきの読者もいるかもしれないが、上記はすべて機内安全ビデオで説明される事項である。僕も昔は安全ビデオには耳を貸さなかったが、航空事故マニアになった今は断言できる。航空事故を生き延びたいのであれば、あのビデオは必見だ。

もっとも、ビデオでも説明してくれない、生死を分ける要素が一つだけある。

それはパイロットの腕だ。

過去の事故を振り返ると、墜落しようがないのにパイロットエラーで墜落してしまったり(エールフランス447便)、到底助からない状況なのにパイロットの手腕で助かったり(ユナイテッド航空232便)する。

こればかりは自分の力が及ぶところではない。

結局最後は、祈るしかないのだ。

 
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