とある宿泊客がニューヨークの老舗ホテルを乗っ取ろうとした法律っぽい話(前編)

ニューヨーク市マンハッタンのミッドタウンに、「ザ・ニューヨーカー(The New Yorker)」と呼ばれる老舗のホテルがある。1930年に建てられたこのホテルは、旧統一教会が1976年に買収した後、1980年台に米国本部として使っていたという、極めて変わった歴史を持っている。

現在は通常のホテルとして運営されているこのザ・ニューヨーカーで、やけに法律と行政の仕組みに詳しい宿泊客が、ホテルを法的に乗っ取ろうとした奇妙な事件が起こった。

事の発端は、2018年6月、ミッキー・バレットーと呼ばれる者がザ・ニューヨーカーに1泊200ドルで宿泊したことであった。

翌日の朝、彼は普段の客のようにチェックアウトせず、代わりに賃貸契約を求めるという行為に出た。これは一見荒唐無稽に見えるが、実は法的根拠があったのである。ニューヨーク州法上、1969年以前に建てられていて、6室以上ある建物に住んでいる居住者なら、建物の所有者に対して6ヶ月間の賃貸契約を要求することができるのだ。

法律はさておき、ホテル側はこの非常識な要求を拒否し、バレットーを2565室から締め出した。そして翌日、バレットーはニューヨークの法律を根拠にホテルを訴えた。まさに、訴訟大国である米国らしい反応である。

ここから問題が始まった。その後、重要な裁判期日になぜかホテル側の弁護士が姿を現さなかったため、欠席裁判でバレットーの2565室に対する居住権が認められてしまったのだ。

裁判所命令が下された以上、ホテル側はバレットーが2565室に復帰することを許容せざるを得なくなった。一方で、ホテルはバレットーとの家賃交渉を拒んだため、パレードは家賃も宿泊費も支払わらないままホテルで暮らすことになった。

この時点で、バレットーは何ら違法なことをしていない。ホテルは戻ってきたバレットーに立ち退きを要求した様子がないので、彼を迷惑男だと認識しながらも無害だと考え、放置することにしたのだろう。バレットーは、極めてマニアックな法律の条項とホテル側の無関心のおかげで、ホテルに居座ることに成功したのである。

(後編に続く)

コメントを残す

Translate »