惨めなファンにサポートされてこそ、スポーツチームは成り立つ
「スポーツはビジネス」が持論である僕は、スポーツビジネスを成り立たせるために不可欠であるファン層について考えることが多い。
たとえば、ニューヨーク市付近をホーム拠点としている2つのアメストチーム。ニューヨーク・ジャイアンツとニューヨーク・ジェッツでは過去の功績が大きく異なり、結果、ファンの体験にも雲泥の差がある。
ジャイアンツは、1986年にスーパーボールで初優勝して以来、直近の2011年を含め4回優勝している名門チームだ。他方、ジェッツは1968年にスーパーボールで優勝して以降、1度もスーパーボールに戻れてない万年弱小チームである。
ニューヨークで生まれ育った人にとって、ジャイアンツとジェッツのどっちのファンになるかで、ファンとしての幸福度がまるで違う。歴史を踏まえれば明らかにジャイアンツのファンになった方が幸せなのだが、ジェッツのファンになってしまう人が少なくない。
ジェッツを選んでしまう大抵の理由は、父親がジェッツのファンであるためだ。そして、親からジェッツを受け継いだ子供達には、悲惨なファン人生の運命が待っている。
その不運を何より示しているのが、今年10月に話題を集めたTiktokの動画である。無勝のジェッツが7敗目を喫するのを観戦した中学生が、インフルエンサーに試合への感想を語っている。
@espn Jets fan had an opportunity to share thoughts on the game and said his piece 😬 (via @dandremac) #jets #football #nfl ♬ original sound – ESPN
苦痛な表現をしながら、「このチームが嫌いだ。このチームのファンに生まれたので、いつまでも僕は、これからもずっと僕は、ジェッツのファンでいるけど……それでも、やっぱり、このチームは嫌いだ(I hate this team. I was born into this and I, I’m not going to ever, I’m always a Jets fan but like, I just I hate this team)」と話す彼に対して、多くの大人のファンから同情が寄せられた。
子供の頃からずっとジェッツのファンをやってる大人には、この子の気持ちが十分わかったはずだ。なにしろ、ジェッツファンの中には、ジェッツの無能さについてテレビで捲し立てるキャスターがいるくらいなのだから。
米スポーツラジオの人気パーソナリティであるリッチ・アイゼンも、父の影響でジェッツのファンになった1人である。だが、彼はジェッツのファンは惨めになるだけなのを自覚していたので、息子がジェッツのライバルであるニューイングランド・ペイトリオッツのファンになることを許容し、息子にジェッツを押し付けなかったことを何より誇りに思っている。
そんなアイゼンは、ジェッツについてべらぼうに詳しい13歳が彼の番組に電話参加してきた時、その子に対して「君はなんでジェッツのファンなの?」と聞かざるを得なかった。
「僕は父の影響でジェッツファンとして生まれたんだけど、実は離脱する機会があって……」と語り始めた彼は、2020年12月にジェッツがさよなら負けして0勝12敗になった後、父から他のチームのファンになったらどうかと言ってもらえたらしい。でも、一晩考えた上で、結局ジェッツのファンでいることを選んだのだそうだ。
この子は今後、ジェッツがどんなに弱くなっても、一生ファンを続けるのだろう。そして、彼の子供も孫もひ孫も、その弱いジェッツのファンになるのだろう。
こういうファンがいるから、スポーツチームはビジネスとして回るのだと思う。だからこそ、こういうファンを増やして裏切らないのが、スポーツチームの使命なのだ。

支持政党や政治思想などは、親の影響を子供が受けることが多いと思っていましたけど、スポーツのチームでもあるのですね。驚きました。もちろん、歌手や俳優などでも親が熱烈なファンだったために、子供の頃から親しみや興味を持つ、というケースは珍しくないでしょうが、代々、あるチームのファンを受け継ぎ易いとは……。でも、親子喧嘩が絶えないより、一緒に応援できるのは平和ですね。
米国では父の影響でチームのファンになるというのは結構多く(僕も父の影響でアメフトチームが好きになりました)、日本でも多いのではないかと思います。
でも、一番面白いのは父と子で応援しているチームが分かれる時だと思います。笑