大谷はお金に無頓着であってはいけなかったのに無頓着だったから、詐欺にあってしまった

大谷翔平の元通訳、水原一平が米国で起訴された。起訴状を読めば、大谷が知らないところで水原が1600万ドル(約25億円)をも窃盗していたことは、もはや疑いの余地がない。

水原の欺瞞は相当深かった。

  • 大谷の野球選手としての給料が振り込まれていた銀行口座には、水原のメールアドレスと電話番号が登録されていた
  • 賭博業者への送金は、すべて水原のモバイルやパソコンから行われていた
  • 銀行から本人確認の電話があった時、水原は大谷に成りすまして大谷の個人情報を伝えていた

詐欺師が支配している銀行口座にプロスポーツ選手の給料が振り込まれてしまっているシナリオは、まさに以前紹介したペギー・アン・フルフォードの詐欺事件と同じである。

ここまで証拠が出てきているのにもかかわらず、まだ「25億円もの金がないことに気付かなかったなんてあり得ない」と大谷を疑っている人がいる。

だが僕は、別に大谷が騙されやすい世間知らずでなくても、彼が何も知らなかったことは十分あり得ると思っている。

大谷のスポンサー収入は年間3500万ドル(50億円超)と報道されており、起訴状から、これら収入は複数の銀行口座に振り込まれていたことが窺える。彼の資産状況は膨大かつ複雑だったため、管理が必須だったはずだ。

そこで資産管理というものに関心がなければ、それを誰かに任せてしまうのは自然の成り行きであるものの、ここで誰が信用できるかの判断を誤ると、えらいことになってしまう。

それは、自分の経験から想像できるのだ。

もちろん僕には大谷ほどの収入はない。だが、資産状況はむやみやたらと複雑化している。銀行口座だけでも世界中の金融機関で10以上維持しており、そこに証券と保険と年金やらが加わる。

幸いにも、僕はこの複雑な資産状況を管理することに何の苦痛も感じない。株価は毎朝と毎晩確認しているし、自分の総資産は概ね数万円の誤差で常に把握している。そして、肝心なことに、僕は絶対に自分の金について他人を信用しない。

だが、自分の性格が違っていたらどうだろう。

金に関心がなく管理が面倒臭いともなれば他人に丸投げしたくなり、任せた人を信じ切って資産に関する判断権限を与えてしまっても不思議ではない。実際、僕のファイナンシャルアドバイザーには、すべての権限を委譲してくれているクライアントがいるそうだ。

しかし、信じた人が本当に信用に値するのか、それとも実は詐欺師なのかは、分かりようがない。

「25億円もの金がないことに気付かないなんてあり得ない」と主張し続ける人は、①自分の資産状況が管理を必要とするほど複雑ではないか、②自分で資産管理をすることを苦と思っていないか、のどちらかに限る。資産管理が必要なのに億劫と思っている人は、詐欺にあう可能性が十分にある。

まさに大谷はそれに該当したのだろう。

僕は起訴状の次の部分を興味深く読んだ。

大谷の収入源は国内外から複数あったので、彼は個別の銀行口座について質問することはなく、収入と投資状況の全体図についてアドバイザーに質問するよう水原に依頼していた

(”Because [Ohtani] received income from a range of both foreign and domestic sources, [Ohtani] generally would not ask MIZUHARA to inquire about specific accounts, and instead, would ask MIZUHARA to inquire with the above-identified financial professionals for an overall picture of his income or investment profile”)

僕にとって各銀行口座の残高は毎週の確認が欠かせないほど重要なことだが、大谷にとってはどうでもいいことだったのだ。

彼はお金に無頓着であってはいけなかったのに無頓着であったからこそ、詐欺にあってしまったのだ。

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