「¥マネーの虎」よりずっとレベルが高い海外版は見逃せない(後編)

前編から続く)

さらには、実業家と起業家とのやり取りも、海外版の方がレベルが高いように見えてしまう。

自腹で資金を出す実業家が起業家の事業計画の甘さを容赦なく叱咤するのは「¥マネーの虎」でも海外版でも見どころであるが、海外版では数字に関する詰めが特に厳しい。

たとえば、イギリスの「Dragon’s Den」にこんなエピソードがある。

起業家の会社は3年間で年商70万ポンドまでの規模に成長し、その期間に15.7万ポンド、12.2万ポンド、13.7万ポンドの純利益、合計40万ポンド超のキャッシュフローを生み出した。起業家がそのうち15万ポンドを事業に再投資したと説明すると、実業家の一人が「残りの現金はどうなったのか」と知りたがる。すると、起業家は慌てた様子で「設備の維持費などがあって。。。」と答えるが、実業家が直ちに「それは純利益に反映されているはず」と反論すると、起業家は口を濁しながら、数年前に20万ポンドほどの追徴課税が発生していたことを認め、その事実の発覚で交渉不成立となる。

会話だけで数字の辻褄が合わず、その原因まで突き詰めるとは、あっぱれである。実業家としてそれくらい見抜けるのが当たり前なのだろうが、「¥マネーの虎」ではそういった数字にまつわるびっくりがあまり見られない。

こうした「¥マネーの虎」と海外版の差は、番組としての成熟度の差からくるものなのか、日本と海外とのビジネスに対する洗練度の差からくるものなのか、正直わからない。

ただ間違いなく言えることは、ちょっとでもビジネスに関心があるのであれば、「¥マネーの虎」を観たことがなくても、海外版、特にイギリスの「Dragon’s Den」は観るべきだ、ということである。

 
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