2022年7月 11日
八方美人といらぬ遠慮は反対に迷惑(後編)
(前編から続く)
この一連の出来事を観察しながら、僕は「自分が彼女の立場だったら、絶対にこんなすんなりには行かなかっただろう」と考えてしまった。
僕はファミレス店舗内といった狭い空間でも迷子になりかねないので、トイレから戻ってきて自分の席だと記憶しているところに他の客が座っていたら、まずはそれが自分の席だということに自信を持てず、”本当の”自分の席を探しに店の中を行ったり来たりしたであろう。
そして、やはり自分の席が奪われたのだということに確信を持てた後も、誤って僕の席を渡してしまった店員や僕の席に座った客に嫌な思いをさせるのをいやがり、僕は店員に声をかけるのを躊躇しては、引き続き店の中を彷徨ったであろう。
やがて僕が頼んだフルコースの料理が僕の席に座った客に出されると、やっと問題が公になり、僕は間抜けにも「あの、それ僕の席と食事です」と声を出し、周囲の客の注目の的となったであろう。
このように”僕だったら”シナリオを考えていたら、つくづく自分がいやになってきた。
そもそも、僕が観察した女性のように、自分に自信を持って、自分が置かれている状況を常に認識し、おかしいと思ったら直ぐにはっきりと物を言えば大事にならずに済むのに、僕はナルシストのくせに変なところで自信を失い、自己主張が強いくせに不要な遠慮をするから、無事に収まることも少々した騒ぎに発展してしまう。無駄な遠慮をされるよりいらない騒ぎを起こされる方がよほど店にも周囲の客にも迷惑であることに、なぜか考えが及ばない。
しかし、こればかりはしょうがないのだと諦めている。なにせ、僕は八方美人なんだから。