僕は未だに現実に近すぎる留年の悪夢にうなされる(後編)

前編から続く)

ボストンカレッジという素晴らしい大学に通った僕は、在学中に母校愛が育み、ロースクールも同校に進学すると決めていた。ところが、自信満々に提出した願書が呆気なく却下されてしまい、他のロースクールに1年間通った後、めげずに再チャレンジしてなんとかボストンカレッジに復帰した。しかし、編入という形での復帰だったことから単位の取得は常にギリギリで、3年生の最後の学期に必要な単位をぴったり取得した上で卒業するという計画を立てざるを得なかった。

そんな綱渡りのロースクール時代を何とか無事完結させようとしていた最終年の2学期目のある日、ロースクールの事務局から「あなたはこのままだと卒業に必要な単位がひとつ足らないことを把握されていますか」という、親切なのか恐ろしいのか分からないメールを受け取った。

どうやら僕は、単位の足し算を間違えたようである。ちなみに僕は、大学では数学を専攻としていた

このままでは留年してしまうところだったが、夢と現実ではひとつだけ肝心なところが違った。現実の僕は、卒業という辛い目標から目を逸らさず、さらには自分という人間をまったく信用しておらず、万一のために保険をかけていた。具体的には、軽いレポートを1本提出すれば単位をひとつ追加でもらえる授業を受けていたのだ。よって、手の施しようがない状態に陥った夢と違って、現実では、何の焦りもなく、教授のところに行って「レポートを書くことにしたので、単位をひとつください」と伝えるだけで「留年危機」から脱出できた。

現実でマジで焦ったのは、実はこの時ではなく前学期だった。

ボストンカレッジでは、学期の始めに期末試験の予定日が公開されていた。1学期目の早々、僕は税法の期末試験が火曜日であることを確認し、その日程だと週末明けの月曜日には勉強しなきゃならないことを嘆いた。

ところが、期末試験期間が始まる2週間前に改めて試験日を確認したら、何を勘違いしたのか、税法の試験は水曜日だと確信し、「ラッキー!三連休!」と有頂天になり、土、日、月と遊び呆けてしまった。

そして月曜の夜。「明日はとうとう頑張らなきゃいけない日だなー」と憂鬱になりながらも翌日に備えて早めに布団に入り、目がとろりとしてきた時にハッと3ヶ月前のことを思い出した。「そういえば、あの時の火曜日って一体なんだったんだろう」と不安になり、布団から出てネットで試験の日時を再々確認したら、なんと(!)、やはり(?)、試験は10時間後に予定されている。

この時ばかりは、さすがに頭が真っ白になった。

しかし、この時も夢と違って選択肢が一つだけ残っていた。それは、徹夜で勉強するという選択肢だ。結局、そこから9時間ぶっ続けで勉強し、朦朧状態の頭で試験を受けて、なんとか単位にこぎつけた。

その数ヶ月後、僕は無事卒業証書を授与できた。

でも、未だに悪夢にうなされるという後遺症が残った。

 
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