2021年7月 26日
ナルシストの僕は、常に周囲に対して怒ってる(後編)
(前編から続く)
僕の怒りの対象は、なにも僕を相手にしない世間に限らない。世間からもてはやされている輩も含まれる。
最近、いわゆるシェアオフィスという場所を活用するようになった。きっかけは、功績たっぷりの知人が起業したことで、オープンしたばかりのショアオフィスを無償利用できるようになり、特筆する実績もなければ起業する野望もない僕がその特権に便乗することにしたのだ。
シェアオフイスとは、無料の飲み物やお菓子が常に置いてありIT設備も揃っている、とても居心地のいい仕事場である。そんなしゃれた場所で、この前、若手実業家集団がどっかのおっさん達と打ち合わせをしていた。高校生にしか見えない奴らの姿を目にしたらキレて、「学生の分際でこんなところに来るなんて生意気なんだよ」と怒鳴り込みそうになってしまった。
このように、僕は自己中心的であるがためにいつも周囲に対して怒りを感じているわけだが、唯一、そんな僕でも心和む場所があった。
それは、時計売場だ。
腕時計の売場なら、彷徨っているだけで必ず店員が駆け寄ってきて何時間でも付き合ってくれる。あの時計とこの時計を見せてくれと言っても嫌な顔をされないし、僕が両腕に腕時計を着けていることにちゃんと気付いてもらえ、両方の時計を「素晴らしいですね、さすがですね」と女性のさしすせそ並みにベタ誉めしてくれる。
これこそが、まさに僕に対するふさわしい接し方。最近、そんな説明を友人にしたら、実に嫌な指摘を受けた。
「それって、単にいいカモが現れたと思われてるだけでは」
今の僕の怒りは、唯一のオアシスを台無しにしてくれたこいつに向いている。