飛行機の旅は、とにかくやることが多すぎる(後編)
(前編から続く)
【読む】(2〜3時間)
年間52冊の読書ノルマがあるにもかかわらず、普段の僕は読書どころではない。よって、冊数を稼ぐ絶好の機会である出張や旅行には、本を4、5冊えっちらおっちら持って行く。
飛行機に乗ってる間は、もっぱら読書にあてられる時間。もっとも、「いつでも読める」という気持ちより「ちゃんと読まねば」というプレッシャーの方が強く、通路側に座った後に窓際の人が現れると僕が激怒するのは、読書ノルマ達成の邪魔になるからである。
少なくとも1冊の本を読書日記に追加するためには3時間が必要。2回3食の食事と映画2本を合わせると9時間。これで、東京からシンガポールの飛行時間を超える。
【寝る】(2時間未満)
やらなければならないことが山ほどある飛行機では、寝てる余裕などない。でも、日本酒が入るとどうもいい感じに眠気が襲う。
とはいえ、寝すぎには要注意である。一度だけ、ニューヨークから東京の便で5時間も寝てしまい、目が覚めたころには着陸態勢に入っていたことがある。流石の僕も、その時ばかりは乗務員を捕まえて2回目の食事を持ってこいとは言えなかった。食事をミスるとは、ジョー、一生の不覚である。
この事件以来、僕は機内での睡眠時間を2時間以内に留めるよう、極力努力している。
【遊ぶ】(18時間以上の便で)
飛行機ではゲームができる。そしてゲームといえば、もちろん将棋である。
しかし、計画どおりに呑んで、食べて、観て、読んで、寝ると11時間近く経ってしまうので、うっかり3本目の映画を観てしまったり3時間も睡眠を取ってしまうと、14時間あるニューヨーク〜東京便であってさえゲームどころではない。一度だけでも18時間半のシンガポール〜ニューヨーク便に乗ってみたいと思うのは、たまには飛行機の中で将棋をしたいからである。
このように僕は、飛行機の中で常に時間と戦っている。
だから、パイロットが着陸体制に入る前に「予定時刻前に到着します」とアナウンスをすると、僕は憤慨するのだ。余計なことをするな、と。