大谷翔平の契約から学ぶお金の仕組み(後編)

前編から続く)

球団が利息なしの後払い契約を結ぶメリットは明確である。では、大谷にとってそのような契約を結ぶメリットはなんだったのかというと、節税対策が考えられる。

連邦制である米国では各州が自由に課税することができるので、所得税に限らず、消費税や固定資産税、法人税や住民税といったありとあらゆる税金の税率が州ごとに異なる。

大谷が住むカリフォルニア州の所得税は米国最高の14.4%。一方、隣接しているネバダ州には所得税がない。所得税は実際に支払われた金額に対して課税されるので、大谷がドジャーズ退団した後にネバダ州に引っ越せば、契約金額である7億ドルのうち、後払いの6.8億ドルに対する州の所得税を全額回避できる。

となると、大谷にとっての契約の本当の価値は、現在価値と節税効果の相殺となる。言い方を変えると、大谷が締結した契約の価値を「通常」の契約と比較するためには、現在価値と節税効果の双方を考慮する必要がある。

具体的には、次の2つのシナリオの比較である。

  1. 実際に締結した契約〜毎年2万ドルずつ支払われる最初の10年間はカリフォルニア州に居住し、毎年68万ドルずつ支払われる次の10年間はネバダ州に居住
  2. 通常の契約〜毎年7000万ドルずつ支払われる10年間、ずっとカリフォルニア州に居住

シナリオ1は現在価値が低い一方で所得税が節税され、シナリオ2は現在価値が高い一方で所得税も高い。

この2つの比較は結構難しい計算となるが、このサイトの試算によると、高い所得税を考慮しても、大谷はシナリオ2、つまり後払いではなかったほうが(現在価値で)4200万ドル(60億円超)得していた。

大谷がドジャーズと契約を締結した時、契約金額が後払いされることで球団が他の選手にも高額な年棒を支払うことができるようになったので、大谷の「チームのため」の判断が褒め称えられたが、お金の論理を踏まえてもその評価は正しかったと考えて良さそうだ。

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