大谷翔平の契約から学ぶお金の仕組み(前編)
先週、メジャーリーグの2025年シーズンが日本で開幕した。開幕戦は大谷翔平、山本由伸・佐々木朗希の日本人トリオが所属するロサンゼルス・ドジャースとシカゴ・カブスの試合だったことで日本でも盛り上がったが、僕が関心を持ったのは2023年に大谷翔平が結んだ契約だった。
実はこの契約、お金の仕組みの面でとても勉強になる内容なのだ。
契約の期間、すなわち大谷がドジャーズに在籍する期間は10年であるが、契約の金額である7億ドル(1000億円超)は、20年に渡って、最初の10年は毎年200万ドル(約3億円)ずつ、次の10年は毎年6800万ドル(約100億円)ずつ支払われていく。
このような後払い契約は米国ではそんなに珍しくなく、メジャーリーグの球団が遥か昔に引退した選手に給料を支払っている例は多い。たとえば、ニューヨーク・メッツは2000年に退団したボビー・ボニラ(Bobby Bonilla)に対して2035年まで支払い続ける必要があるし、ボストン・レッドソックスはマニー・ラミレス(Manny Ramirez)に対して2001年に締結した8年契約に基づいて2027年まで支払い続けることになっている。
大谷の契約が珍しいのは、後払いなのに利息がつかないことである。
デフレでゼロ金利の日本の感覚だとピンとこないかもしれないが、インフレがある米国では、明日の1億円より今日の1億円の方が価値がある。よって、後払いには利息がつくのが常識であり、メジャーリーグの契約では金利が12%を超える場合がある。
利息を求めなかった大谷は実質球団に無利子でお金を貸しているわけなのだが、利息がつかないと言うことは大谷の契約には7億ドルの価値がないことを意味する。
では、契約金額である7億ドルの実際の価値を示す現在価値(つまり、将来受け取ることができるお金を現時点の価値に計算し直した(割り引いた)金額)はいくらかなのかというと、3億7400万ドル(約560億円)と試算されている。現在価値を計算するためには割引率(金利)を何%にするかが重要な要素になるが、興味深いことに、メジャーリーグでは後払いの契約が多いため、球団オーナーとメジャーリーグ選手組合との間で交わされている包括的労働協約(Collective Bargaining Agreement)において、現在価値を計算する際に利用すべき割引率は4.43%と定められている。
(後編に続く)
アメリカで活躍する世界のスーパースター大谷選手には、日本人の多くが憧れや敬意を抱いていると言えましょう。私もその一人です。彼の契約が後払いだということは知っていましたが、このような観点から考えたことはなかったので、興味深い内容でした。
アメリカのスポーツ選手の契約は、後払い以外にも色々面白い要素があります!!!