数学的な確実性を持って40億円も宝くじで儲けたあるアメリカ人夫婦の話(前編)
「宝くじは買わないと当たらないんだ」
こう断言してはサマージャンボと年末ジャンボを買い続ける僕を多くの人は揶揄するが、アメリカには数学的な確実性を持って2600万ドル(40億円)も宝くじで儲けた人たちがいる。
彼らの名前はジェリーとマージ・セルビー(Jerry and Marge Selbee)。人口1900人で信号が1つしかないミシガン州のエバートと呼ばれる小さな町に、子供の頃から住んでるありふれた夫婦である。
事の発端は、隠居生活を満喫していたある朝、ジェリーがコンビニで、WinFallと呼ばれる新しい宝くじのルールを説明するパンフレットを手に取ったことだ。
アメリカの一般的な宝くじでは、多数ある数字から6つを選ぶ。すべてが当たれば1等になるが、1等の当選者がいないとその賞金は次回に繰り越される。これはRolloverと呼ばれる仕組みで、時々アメリカで数億ドルもの宝くじを当てた人が話題になる背景にはRolloverがあるのだ。
パンフレットを精読しながらジェリーが注目したのは、WinFall宝くじの場合、1等の賞金が500万ドル(7億5000万円)を超えても当選者が出ないと、Rolloverが起こらず、代わりに3つ以上の数字を当てた人たちにその賞金が分配されることだった。この仕組みはRolldown(転げ落ち)と呼ばれ、これが起こると、5つの数字を当てた時の賞金が2500ドル(37万円)から2万5000ドル(370万円)に、4つの数字を当てた時の賞金が100ドル(1万5千円)から1000ドル(15万円)に、3つの数字を当てた時の賞金が5ドル(745円)から50ドル(7450円)にぐんと増えた。
これを具体的な購入額に当てはめると、次のような計算になる。
1100ドル分(16万円)の宝くじを買った場合、確率的には、4つの数字が当たってるくじが1枚、3つの数字が当たってるくじが18枚出るはず。通常これは190ドル(2万8千円)の賞金にしかならないが、Rolldownがあると1900ドル(28万円)の賞金になり70%超の利益が出る。
リスクは1つ。1等が出てしまうとRolldownが起こらないので、大赤字になる。1等は遅かれ早かれ出るので、WinFall宝くじは数学的に有利でありながらも博打性は残っていた。ある意味、完璧な宝くじだ。
自分の計算に自信を持ったジェリーは、次回Rolldown宝くじが販売された時に3600ドル分(54万円)を買った。すると6300ドル(94万円)の賞金が当たり、ほぼ計算通りの利益が出ることが確認できた。
ここまでくると、あとは購入額を増やすだけだ。セルビー夫婦は新しい会社を設立し、親族や友人に1株500ドルで株式を売ることで投資を募り、Rolldownがある度に膨大な額の宝くじを購入しては、がぼがぼ儲けた。
たとえば、51万ドル分(7600万円)の宝くじで85万ドル(1億3000万円)の賞金を当てるなど。
(後半に続く)
WinF-allは、日本のロトくじと同じようですね。本当にそんなに巧く行くなら、買ってみたくなりますが、やはり甘くはなさそうな予感も。