今となっては信じられないが、僕は大学で数学の専攻だった(後編)

前編から続く)

ところで、僕には小学・中学まで一緒だったある幼馴染の友達がいる。当時の彼は、塾という下駄を履かせていた僕の影に隠れてしまっていたが、今振り返ってみると、彼こそが我が学年での本当の「数学の天才」だったのだと思う。

というのも、彼は工科大学を卒業し、大学院まで進学し、今は大学で数学を教えている。僕と違って、正真正銘の数学者である。

その彼、最近どうも僕が数学ができなくなってるらしいことに気づいたようで、この前久しぶりに会ったら、自分の授業で出す試験を僕に受けさせようとした。

最初に彼が渡してきたのは、微分方程式の授業の期末試験。僕はこの科目を高3の時に勉強したのだが、さらっと目を通したら問題の趣旨さえ分からなかったので、お手上げポーズをしてしまった。

すると次に友人が渡してきたのは、多変数微分積分学の試験。これは高2の時に受けた授業である。なるほど、友人は一つずつレベルを下げながら、どこまで僕が落ちこぼれたのかをネチネチと確認するつもりらしい。

試験の問題をぱっと見て「微積分は覚えてるけど多変数はハードルが高すぎる」とコメントしたら、友人は「微積分を覚えてるのなら、これくらいは当然解けるよね」と言いながら一変数微分積分の試験を渡してきた。これは高1の時に受けた授業である。が、情けないことに、問題の趣旨は理解できても解き方はさっぱりで、すぐに頓挫してしまった。

それを見た友人。呆れたように「もうこれより下の授業はないから」と言って、台数の計算ばかりが並んでる試験を渡してきた。彼曰く、この授業は工科大学に入学したにも関わらず数学の基本ができてない学生に基礎を叩き込むための授業なのだそうだ。

とうとう中学時代まで転落してしまった。これ以上恥はかけないと思い、張り切って最初の問題を解いたら、友人は先生ぶって、「何をどう計算したのか論理が追えないけど、一応正解」とOKを出してくれた。もっとも、10分かけてなんとか解いた僕の姿が哀れに思えたのか、「もういいよ、分かった」と見捨てた感じで、2問目以降の回答は求めてこなかった。

道理で、高校受験の数学で4点しか取れないわけである。

ということで、冒頭の朝日新聞の記事に出てた三角形の問題が今の僕に解けなくてもなんの不思議もないのだが、他方で、ある時まで「数学の天才」と呼ばれていたメンツがあるので、頭をひねってこの問題をなんとか解こうとした。そして、案の定、回答は間違っており、僕は記事に載ってた数学が分かってない小学生の80%と同レベルであることが確認された。

繰り返しになるが、僕は大学で数学の専攻だった。

 
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