やさしいより厳しいほうが「いい人」の場合もある(後編)

前編から続く)

同じ職場に、Aさんとはまったく逆の性格の偉い人Bさんがいた。僕は、Aさんの「いい人」ぶりの怖さを知ったからこそ、Bさんのありがたさを学んだ。

Bさんは、仕事の出来が悪いと必ず指摘する人であった。当初の僕は、そんな彼に仕事を頼まれると、会うたびに何か言われるのではないかとビクビクしていたのだが、いずれは、AさんよりBさんと仕事をする方が楽になってきた。なぜなら、Bさんが僕の仕事を褒めてくれたら、それは言葉通り受け取っておけばよかったからである。反対に、Bさんに仕事の出来が悪かったと言われれば、どこがいけなかったのかまでちゃんと教えてくれるので、その後は言われたとおりに改善していけばよい。

「仕事の出来を教えてくれない」と言うことは、「指導してくれない」と言うことでもある。AさんもBさんも、悪意を持っている人ではないと言う意味では「いい人」であった。しかし、表面的に親切であったAさんといろいろ指導してくれたBさんのうち、どちらの方が僕の成長により貢献してくれたかは言うまでもない。

結局は、「いい人」をどう考えるのか、なのだと思う。「やさしい」と「親切」とは異なる。質の悪い仕事を続けていれば、遅かれ早かれ引導を渡される時がくる。その時、それまでずっと「君はよく仕事をしている」と言われていたのと、定期的に「君はこことこことここができてないから改善する必要がある」と言われていたのとでは、受け止め方が大きく違ってくる。

僕のことを考えて厳しく指導してくれる人こそが「いい人」。そんなふうに考えられるのは、社会人として少し成長したからだろうか。

 
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