米国銃社会の恐ろしさ、研修を受けて学ぶ
僕が米国ニュージャージー州の銃購入免許を取得して思ったことは、「これでは到底拳銃は買えない」であった。
何しろ、銃について何も学ばず、何も試問されずに免許を与えられたのだ。「責任ある拳銃保持」を試みていた僕としては、全くの無知状態で銃を購入するなどできるはずもなかった。言うまでもないことだが、銃とは扱い方を間違えれば人が死ぬものである。
したがって、銃購入免許取得の直後、拳銃に関する研修を探すことにしたのだが、さすが米国、すぐに全米ライフル協会(National Rifle Association)が主催する研修が運転10分で行ける近所で見つかった。
「研修」と言っても会場で講義があるのではなく、そこそこ裕福そうな兄ちゃんの豪邸で1対1で教えてもらうのだ。インテリが真面目に拳銃を趣味とするのが米国だ。
そこで受けた3時間研修コース。最初は「拳銃を扱う時の『四つの基本』」という、極めて常識的な内容を学ぶことから始まった。
① どの拳銃も必ず銃弾が入っているものと思え
② どの拳銃も発砲しても大丈夫な方向に向けて扱え
③ 拳銃を撃つ前に標的とその裏を確認せよ
④ 発砲する直前まで引き金に指を掛けるな
どれも拳銃を買う・撃つ・触る人には必須と思われる知識なのだが、なぜか米国では免許取得の条件とならない。だからこそ米国は危険な銃社会になるわけなのだが。
さて、この基本的な知識を学んだ後、研修は恐ろしい方向に進んだ。「防護の方法」という名のもと、「家に強盗が侵入してきたらどう撃つべきか」ということを教えてもらうのだ。
まず最初に強調されたのが、「強盗を見たら直ちに逃げるか撃つかを決めろ」という点だった。
そもそも射撃場で撃つことしか想定していなかった僕にとって、選択肢は「敵前逃亡」しかありえなかったのだが、それでは研修が30分で終わってしまうので、「強盗にばったり出くわしてしまった際、腹を括って撃つ」というありえない選択を僕がするという前提の下、研修は継続された。
もっとも、その後得た情報は知りたくないことばかりだったのだが。
例えば、強盗を撃つと決めたら狙うべきは頭ではなく胴体であるということ。強盗に出くわしてパニクっている状態では面積が狭い頭を狙っても当たりにくいのだ、と淡々と説明されたが、たとえ当たったとしても、硬い頭蓋骨を銃弾が突き抜けない可能性もあるらしい。
さらに引き金を引く回数も徹底された。まずは2〜3発撃った上で、強盗がもぞもぞしているようであれば、残りの銃弾すべてを撃ち尽くせと言われた。これにもそれなりの合理的な理由があり、相手が動いているということは撃った弾が当たっていない可能性が高く、さらに肝心なことに、相手が撃ち返してくる可能性がある、ということなのだ。
ここまで聞いて僕は「いや、だから、その危険性があるから最初から逃げ出すのだ」と反論したくなったのだが、情熱的に教えてくれる兄ちゃんに対して今さら言い出せなかった。
こうして、知りたくもない「人の撃ち方」を学習した後、研修は射撃場に移り、やっと実の銃を撃たせてもらえた。
これが生涯初めて拳銃を撃った体験。この時に使わせてもらったのは22口径のピストルで、これは女性用のピストルとも言われるほど反響も反動も少なく、実に撃ちやすかった。だから「なんだ、拳銃とはこんなものか」と思ってしまったのだが、これが大変な罠であった。
というのも、研修後、「どうせ買うなら22口径より迫力があったほうがいい」と思ってしまい、Springfield XD-9という9mmの拳銃を買ったのだ。
22口径は5.6mmに相当するので、数学に強い人であれば9mmのピストルは4倍以上の威力があることが分かるのだが、拳銃を購入した時の僕はだいぶ興奮しており、とても冷静にこの事実に気付ける精神状態ではなかった。
その結果、初めて射撃場で自分の9mmを撃った時にたまげるほどびっくりする羽目にあったのだが、その驚きもこの9mmと共に南部に旅行した時とは比べものにならなかった。
南部への冒険についてはまた次回。
私も同じ経験をしました。MITは射撃場がありPE(Physical Education)のコースに射撃もあります。私はそこで毎週射撃の練習をしました。コーチは軍曹上がりの怖い人でした。競技用のピストルは22口径です。一度32口径を打った時その衝撃の大きさにびっくりしました。32口径では標的に全く当たらなかった。
私の時代(40年前)にはMITの教授もピストルを持っていました。私は留学生だったのでピストルは買うことはできませんでした。ピストル射撃のスカラーシップもあったそうです。