お金に関する5つのアドバイス(後編)
(中編から続く)
【⑤ 税金の仕組みを学ぶ】
確定申告することの大きなメリットは、税金の仕組みが分かるようになることである。そして、税金の仕組み分かると、税金を意識した経済的判断ができるようになる。
ちょっと極端だがわかりやすい例を挙げてみる。
新居と新車を同じ時期に買うことを検討しているとしよう。資金が200万円あるとした場合、これは車のローンの頭金として使うのがいいのだろうか、それとも家のローンの頭金として使うのがいいのだろうか。
この質問に対して大半の人は感覚的に家のローンと答えるが、税的には正解は逆である。なぜなら、住宅ローンには控除がある一方で車のローンには控除がなく、どうせ借りるなら、控除できないローンより控除できるローンの方がいいからだ。
さらに重要なのは、「控除」には「所得控除」と「税額控除」の2種類があり、住宅ローン控除は後者に該当するという点である。2つの控除の違いは、所得控除は税率をかける前の課税所得から控除され、税額控除は計算した税額から控除されることだ。
この説明だけだと分かりづらいだろうから、税込み年収300万円、税率25%、「控除額」20万円でシミュレーションしてみる。
所得控除の場合、税額は次のように計算される。
[年収(300万)ー 控除額(20万)] x 税率(25%)=70万円
一方、税額控除の場合、税額は次のように計算される。
[年収(300万)x 税率(25%)] ー 控除額(20万)=55万円
「控除額」は同じなのに、税額控除の方が所得控除より税額への影響がずっと大きい。これは、所得控除の場合、税率を掛けた金額(20万x25%=5万)しか税額が減らない一方、税額控除は控除額全額分(20万)税額が減るからだ。
大半の控除は(配偶者控除や生命保険控除を含み)所得控除だが、住宅ローン控除は数少ない税額控除である。上記の車ローンと住宅ローンの例に戻ると、車ローンではなく住宅ローンで借りることに経済的には相当な違いがあることが分かる。
ここで注目したいのは、同じ20万円の控除でも、生命保険控除と住宅ローン控除ではまったく価値が異なる点である。あまりに価値が違うので、生命保険控除と住宅ローン控除を「控除」と一括りで語ってはいけないくらいだ。
似たようなことは、iDeCo(確定拠出年金)とNISAについても言える。iDeCoとNISAは「非課税で資産運用できる節税対策」の一括りで語られることが多いが、これら2つは税的に大きく異なる制度である。
すごく分かりやすくいうと、iDeCoとNISAでは(同じく非課税で資金運用できるものの)最初に入るお金、すなわち拠出金の性質が異なる。
たとえば、20万円をiDeCoとNISA両方に拠出したとしよう。iDeCoの場合、この20万円は所得控除されるので、見方を変えると(拠出する時には)課税されない。他方、NISAに拠出する20万円は所得税を支払った後のお金である。言い方を変えると、税率が25%の場合、iDecoに入れる20万円にはNISAに入れる約26万円の価値がある。
これだけだと課税されないiDeCoの方が明らかに得のように見えるが、iDeCoの場合、拠出金が課税されなかった分、受取金は(特定の控除額を超えると)課税される。つまり、入口で課税されなかった分、出口で課税される可能性があるのだ。NISAは入口で課税されてたため、出口では課税されない。
税金の仕組みは難しいようでコツが掴めるだけでも十分であり、何より応用が効く。僕は毎年確定申告してきたことで税金の仕組みの基本が分かるようになったため、iDeCoとNISAの違いがすんなり理解できた。
お金について把握するためには、税金の仕組みの知識は欠かせない。