高校の人気投票で健闘した僕は、卒業式でスピーチをする羽目になった(前編)

僕は高校の卒業式でスピーチをしている。

すご〜い、と思うかもしれないが、通常であれば功績であるはずのことが呆れるほど浅はかであるのが僕なのだ。

僕の高校では、卒業式でスピーチをする卒業生を同級生と先生の投票で決めていた。生徒票はホームルーム毎に1票、先生は1人1票というだいぶ一票に格差がある仕組みで。

これはまさに人気投票だ。人気者になることが当時からの生きがいだった僕としては、まさに自分の人気度を客観的に測れる機会だ。こんな稀に見る機会を逃すことはできず、僕は即に立候補した。

そして、選挙好きである僕は、当然のこととして、票読みを始めた。

立候補したのは3人。1人は僕より成績が良く、僕と違ってスポーツも得意な「出木杉くん」で、僕の主なライバルだった。もう1人はいわゆる「泡沫候補」で、僕の相手に値しなかった。

スポーツができると人気が出るのはどの学校でも同じで、出木杉くんはサッカー部と野球部を中心に票を広げるのが確実だった。さらに勉強もできるので、成績上位の秀才票もそこそこ取り込めそうであった。先生票についても、成績がいい生徒を評価する傾向にある先生の間で、出木杉くんが票を積み上げることは間違いなかった。

一方の僕は、高校生活を通してピエロ役に徹しており、一般生徒の中で受けがよかったはず。少なくとも、出木杉くんよりは庶民の票を集められる自信があった。成績も出木杉くんほどではなかったものの悪くもなく、「意外とバカじゃない奴」として先生票も一定数取れる自信があった。

とはいえ、投票制度は僕にとって極めて不利だった。

後編に続く)

 
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