ファーストクラスのいろいろ(後編)
(前編から続く)
もっとも、上には上がいれば下には下がいることも然りであり、これはファーストクラスでも同じである。
数ヶ月前、ひょっとしたことで知り合いになったアメリカの大学生が日本に来るというので、人生の先輩かつ社会人として、僕からしたら結構なお値段である寿司屋のすしざんまいでお昼を奢ってあげることにした。真昼間だったものの、「僕も飲むから君も飲め」って促したら、「実はちょっと飛行機で飲みすぎて…」みたいなことを言い出したので、何があったのか聞いてみると、なんとファーストクラスで来日したのだそうな。
学生の身分で。初めての日本に。それもファーストクラスを独占して。
写真を見せてもらいながら話を聞くと、他にファーストクラスに客がいなかったので、乗務員のおもてなしのすべてが彼に向けられたそうなのだ。
よって、まずはしょっぱなから、シャンパンを溢れるほど注がれたらしい。
そして、高級なウイスキーを飲んで見なさいとサントリーを押し付けられたらしい。
夕食も大層豪華である。ちなみに、彼の父はシェフだそうだ。
デザートもめちゃ美味しそうである。
そして、夜食には、海鮮丼だの、カレーだの、麺類だのを食べさせられたらしい。
それもデザート付きで。
もはや、すしざんまいがチンケに見えても致し方ないほどの贅沢をしてきたのだ。
果たして、彼は実はどこかのおぼっちゃまなのかと思いそれとなく探って見たら、たまげたことに、一銭も使わずにファーストクラスの旅を実現できたのだそうだ。彼曰く、大学時代の生活費のすべてを一つのクレカに付けていたらコロナ中山ほどマイルが貯まったところ、カード会社が特別なキャンペーンを実施しており、ANAにマイルを移行したら数十パーセントのボーナスマイルが上乗せされたので、ファーストクラスに足りたらしい。
なるほど、賢ければ学生の身分でもファーストクラスに乗れるのだ。
ファーストクラスでも、一銭も払わない人もいれば、お付き人が付き添う人もいる。
「人生いろいろ」がモットーである僕にとって、天下のファーストクラスにもいろいろがあるとは、実に世の中、奥が深い。