そばが好きすぎて生活が破綻したあるそば好きの悲劇(後編)

前編から続く)

数年後、そば好きの職場が変わりました。新しい職場はMinatoyaからだいぶ離れてしまいました。

するとそば好きは、Minatoya禁断症状にうなされるようになりました。我慢ができなくなると、2時間の昼休みを取ってMinatoyaに食べに行きました。そばを茹でてる人は、あまり来なくなったそば好きを心配そうにニコニコ笑いながら迎えてくれました。

そんなある朝、そば好きにMinatoya禁断症状と風邪の症状が同時に現れました。そば好きは、体調の大事をとるか腹具合の大事をとるか悩んだ挙句、体調の大事をとるという過ちを犯しました。

すると数日後、何の前触れもなくMinatoyaが閉店してしまいました。そば好きは、Minatoyaに行こうと思ったのに行かなかった後悔と、Minatoyaに行こうにももう行けなくなってしまった絶望感から、命を絶とうとまで思いつめました。

それ以降、そば好きは生きがいを失ってしまいました。どんなにそばを食べても、決して満足することはありませんでした。

そば好きの家族は、空っぽになってしまったそば好きを心配そうに見守りました。そして、なんとかそば好きを元気付ける方法はないかと一生懸命に情報を探りました。そしてある日、羽田空港第2ターミナルにMinatoyaが開店したというブログを見つけました。家族はそれをそば好きに見せました。

するとそば好きは見違えるように元気になりました。そば好きは直ちにバスと電車を乗り継いで羽田空港に向かいました。時間は1時間近くかかりました。交通費は片道700円でした。

新しいMinatoyaは言葉どおり空港の中にありました。店はなぜかメルセデスベンツとのコラボでした。ニコニコ笑いながらそばを茹でてる人はいませんでした。

そば好きがメニューを見ると、そばは「肉そば」しかありませんでした。それも普通盛りと小盛しかなく、大盛りはありませんでした。普通盛りはなんと1,100円でした。

そば好きは「肉そば」の普通盛りを注文し、肉その他トッピングはすべていらないと言いました。親切な店員はトッピングがなくても値段は変わらないと説明しました。そば好きはそれでも構わないと言いました。

そば好きは出てきたそばを食べながら、懐かしさがこみ上げてきて泣いてしまいました。そして数秒後、あまりの量の少なさに号泣してしまいました。涙が止まると、そば好きはもう一人前を注文しました。

それ以降、そば好きはしょっちゅう羽田空港のMinatoyaに通うようになりました。そして毎回、「肉そば肉なし」の普通盛りを2人前頼みました。時々、三つ目をおかわりすることもありました。

そば好きは徐々に、何時間も仕事をサボって5,000円のそばを食べにいくという行為が異常であるという感覚が麻痺していきました。

そしてある日、そば好きの生活は経済的に破綻して、温野菜に行って肉15皿を食べることもできなくなってしまいました。

 
2 Comments

コメントを残す

Translate »