僕は金の亡者(前編)

僕は金の亡者である。

実は、映画より、飛行機より、そして将棋より、金が好きである。

僕の金に対する執着は、通帳を眺めてはニヤニヤしていた子供の頃から、一向に変わらない。

たとえば、僕はいつでも、数万円の誤差で自分の今の純資産がいくらあるのかを把握している。それも、総額だけでなく内訳までもだ。どの国のどの金融機関に、どういった形態の資産がいくらほどの含み損を抱えているのか、常に頭の中に入れている。

そして、この情報は日付の単位、資産によっては分単位で更新している。

僕が朝起きて真っ先にすることは寝てた間の米国株式市場の動向の確認であり、夜の23時半(サマータイム中は22時半)から就眠までの間は5分刻みで株式の上下動を追っている。株が高騰していればワクワクしながら寝て暴落していればイライラしながら寝るが、一番嫌なのは、大した動きがなくてムラムラしながら寝る時だ。

気にしているのは純資産だけではない。複数の生命保険に入っている僕は、死んだ自分にいくらの価値があるのかまでちゃんと計算している。その額は純資産をはるかに超えているので、自分の存在意義が金銭的なものしかないのであれば、さっさと切腹してしまった方が価値が上がる。

後編に続く)

 

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