「リスクがなくて短期で儲かる投資」を試して、やはりあり得ないと痛感する(後編)
(前編から続く)
グラフの横の軸を見るだけで、予定通りにいかなかったことが一目瞭然である。なにしろ、3月の株主総会の直後に優先株が普通株に転換されるはずだったのに、8月下旬まで優先株が取引されているのだ。
計画が狂い始めたのは2月23日である。その日、訴訟社会のアメリカらしく、大手普通株主が訴訟を起こし、株式転換を阻止しようとした。転換されない優先株は価値がないので、優先株の株価は8%も下落した。
3月14日には株主総会で株式転換が承認されたものの、訴訟が解決されるまで転換は実施できなかったので、その後も優先株の株価は低迷し続けた。
まさかこのまま転換されずに$0になってしまうのか、と危惧し始めていたら、4月4日に一筋の光が差し込まれた。会社と株主の間で訴訟の和解に至ったと発表されたのだ。この日、優先株の株価は13%跳ね上がった。
あとは裁判所による形式的な承認を待つのみ。僕はこのまま優先株が上昇し続けると信じて疑わず、実際、株価は徐々に上がっていった。
ところが、7月21日の金曜日の夕方、裁判所が和解を拒否するというまさかの判決を下す。時間外取引で優先株は$0.67まで暴落し、僕は絶望的になった。
しかし、それも一時的。すぐに会社と株主との間で新たな和解に至り、今度こそ裁判所の承認は間違いないと思われた。そして、実際、8月11日に裁判所が新しい和解を承認すると、優先株は27%も高騰した。
その後、転換日が8月25日に設定され、あとは優先株が普通株の株価に近づくのを待つのみだったのだが。。。
問題は普通株であった。8月11日に$5.10だった株価は連日30%暴落し、想定どおり優先株と普通株の価格差は縮小していったものの、それは普通株の大暴落という形で現実となっていった。
やがて普通株の株価も$2.36を下回り、もはや優先株が転換しても損失が出ることが確実になってしまい、僕は泣き泣き転換を待たずして8月22日に優先株を手放した。
約定価格$1.79。24%の損失である。
「リスクなしに短期で儲かる」を確信していたら、半年後、見事に大損。
すでに分かっていたことであるが、実際にやってみて痛感した。
やはり「ローリスク、ハイリターン」はあり得ない。
* 読者の中には、本当のアービトラージ取引なら、優先株を購入するのと同時に普通株を空売りすべきだったと指摘する人がいるかもしれない。僕はリスクが高い信用取引をしない主義なのだが、たとえ普通株を空売りしていても、損失が出ていた。問題は、あまりに空売りが多すぎて手数料が高騰し(一時期900%を超えていた)、訴訟の決着まで長引いたことから、手数料が利益を圧倒してしまっていたのだ。
正に天国と地獄、逆転に次ぐ逆転、どんでん返しの連続ですね。企業ドラマとして見るならスリリングでおもしろいかもしれませんが、自身の身に実際に起こると考えると、生きた心地がしないというか、痛恨の極みだったでしょう。やはり、そう「うまい話」はない、ということでなのだと、改めて感じました。
もう、まさに、毎日ハラハラドキドキでした。ブログのネタとしては面白かったと思うのですが、起こっている間は悲劇でした。笑
当分、「うまい話」には手を出さないようにしたいと思います。(そんなことを言いながらも我慢ができないのが僕なんですよね。。。)