米国を参考に、日本のプロ野球はチケット代を大幅に値上げすべきではないか(前編)

スポーツとお金の関係に関心がある僕は、米国と日本のプロスポーツの世界を比べて不思議に思うことがある。なぜ日本ではスポーツ選手の年棒が米国より著しく低いのだろう、と。

たとえば、野球。2025年シーズンのメジャーリーグ選手の最高年棒は大谷翔平の7000万ドル(約100億円)で、プロ野球選手の最高年棒はライデル・マルティネスの12億円だ。平均を見ても、メジャーリーグは460万ドル(約6.5億円)プロ野球は5000万円未満である。

人口の差では説明がつかない日本と米国の野球界のお金の規模の違いはどこから来るのだろうと以前から疑問に思っていたら、最近、謎が少し解けた。理由は、メジャーリーグのアトランタ・ブレーブス(Atlanta Braves)が2023年に上場し財務諸表を公開するようになり、日本ハムが一部公開している北海道日本ハムファイターズの財務情報と比較できるようになったからである。

プロスポーツチームの経営は何よりファンの数に依拠する。よって、まずはブレーブスとファイターズそれぞれの拠点の人口をみてみる。アトランタ市の人口は約50万人で札幌市の人口は約200万人だが、郊外まで含めると、アトランタ市とその周辺の人口は630万人以上で、道央圏の350万人を大きく上回る。ファンになり得る人口は、ブレーブスの方がファイターズより1.8倍多いと考えられる。

では、事業規模は1.8倍なのか。

2023年のブレーブスの売上高は5.8億ドル(約810億円)で、ファイターズの251億円の3.2倍だ。試合数(メジャーリーグは1シーズン162試合、プロ野球は143試合)を考慮しても、ブレーブスはファイターズの2.8倍の売上を出せている。

収益の内訳をみると、どのようにブレーブスがファイターズよりフォンをマネタイズできているかが見えてくる。

ブレーブスのチケット・スポンサー料・飲食からの売上は3.4億ドル(約480億円)で、放映権からの収入は1.6億ドル(約230億円)。ファイターズは具体的な数字を出していないが、公開されている情報に以下の図が含まれており、チケット・広告(スポンサー料)・飲食が7割くらい(約175億円)、放映権が1割強(約20億円)占めていた模様だ。

ブレーブスが放映権から得ている収入(約230億円)は、ファイターズ(約20億円)の10倍もある。拠点地の人口と試合数の違いを踏まえても、ブレーブスはファン対象人口1人1試合当たりファイターズの5.6倍もの放映権の収入を得ていることになる。プロ野球がメジャーリーグ規模のお金を動かすためには、まずはスタジアムに来ないファンにも試合を観てもらう必要がありそうだ。

(後編に続く)

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