最終学歴卒園の国際弁護士、中学校受験に挑む〜採点の巻〜(後編)
(前編から続く)
エリート学歴からますます遠のいている厳しい現実に憂鬱になっていたら、受験シーズンのためか、光栄ゼミナールのCMを目にすることになった。それによると、受験は戦略であるらしい。
しかし僕は、中学受験に挑むにあたってちゃんと戦略の重要性を理解しており、まさにCMにあるとおり、「合格に必要なことを冷静に見極め」、「自分の強みを最大限に活かすための選択」を行なったのだ。
僕は一体どこで間違えたのだろう。
そんな悩みを抱えていた時、このブログの熱狂ファンから重要なヒントを頂戴した。
「戦略の巻」を読んだだけで僕の灘中学校入試の不合格を確信したその人によると、「受験を舐めるな」だそうた。
「理科きらーい、だからやらなーい」と小学低学年生みたいに振る舞うのではなく、頭に鉢巻を巻いて、何ヶ月間にも渡って、終日、身を入れて理科を勉強するのが受験なのだ、と。
そんな指摘を受けて改めて考えてみると、省みるべき点が複数あった。
たとえば僕は、「灘」という字が読めておらず、学校の名前を言えなかった。「難」に似ているのでどうせ「ナン」と読むのだろうと勝手に思っていたのだが、実は「ナダ」だと知ったのは不合格が確定してからである。入試を受けるのであれば、学校の名前ぐらいはちゃんと確認しておくべきだった。
さらに、確かに僕の戦略には「見極め」と「選択」があったが、今となっては、光栄ゼミナールのCMの最後で強調されている「集中」が欠けていたように思う。算数で出題されるのは二次元だけのはずだとか、漢字の書き取りではいい点数が取れるだろうとか、僕の戦略は何の根拠もない楽観視の上に立っていた。
こうして、高校受験に失敗し、中学受験で後退し、受験プロのアドバイスを聞き、第三者の指摘を真摯に受けとめて、やっと僕は、今のままのやり方ではエリート学歴を獲得することはできないことを悟った。
それなら、貴重なアドバイスをくれた光栄ゼミナールの夏期講習にでも応募しようかと考え始めたところ、もともと「集中」といった真面目なことを嫌う性格が、僕に悪魔のひらめきを与えてくれた。
実は僕はすでに、小学校お受験に成功している。せっかく受かったその小学校を諸事情で退学することになったが、懇願すれば、復学を許してくれるかもしれない。それが叶えば、「私立小卒」の学歴になれる。
さらには、日本は中学校まで義務教育だ。別に受験などせずとも、普通に地元の学校に通い続けるだけで、学歴が「中卒」になる。
目的が「卒園」からの学歴アップなのであれば、実は受験の苦労など一切経験する必要がないことに、今更ながら気付いたのであった。
無論、こんな当たり前のことが分からないからこそ、灘中学校の受験に失敗するのだが。