営業を受けて知った、できる営業マンとできない営業マン
昨年、突然「利率が高くていい社債があるんですよ」と形式的には僕の担当者である証券会社の者から電話があった。
今まで何の話もしたことがないのに急になんだと思いながらも、お金の運用に関する話が大好きな僕はとりあえず付き合うことにした。
そこでまずは「どういうリスクがあるんですか」と質問してみた。利率が高いのはリスクが高いから、というのは投資のイロハだ。大して難しい質問をしたつもりはない。
ところが、これに対して営業マンは口を濁すだけで、もっぱら「利率がいいんです」を繰り返すだけであった。
このままでは埒があかないと思い、「じゃあ、リスクについて目論見書にはなんて書いてあるんですか」と具体的に聞いてみた。目論見書とは投資家に対する説明書みたいなもので、その中には必ずリスクに関する記述がある。
するとこの営業マンは、「目論見書はインターネットからダウンロードできます」と返事してきた。明らかに目論見書を読んでおらず、それの提供を求められるとは夢にも思ってもいなかったお粗末な回答である。
彼はそもそも、電話した相手である僕のことを知らなすぎる。
ちょっとでも会話をしたことがあれば、僕が投資について完全の素人ではなく、つい最近まで目論見書の作成を仕事としていたことを知ったはず。「利率がいいんです」、「安いんです」を念仏のように唱えていれば買ってくれる相手ではない。
こんな勉強不足な営業マンだからこそ、社債を売りさばけずに、なんの付き合いもない僕にすがりついてきたのだろう。
他方で、僕の銀行の担当者は極めて優秀である。
この人は4人目の担当者なのだが、前の担当者に比べるとアドバイスの質が群を抜いている。以前は米ドル建ての定期預金とか日本の国債とか随分レベルの低い話しか聞けなかったのに、今の担当者に変わった途端、僕の経済的状況と資産運用に対する考え方に一致した商品が提案されるようになったのだ。
そして最近、この担当者の優秀さに改めて感心させられた。
昨年この担当者が産休に入ってしまいその間に別の人が担当にあてられたのだが、数ヶ月前、その代理の者から保険の案内が送られてきた。資料にさっと目を通しても特に魅力を感じなかったので、その時はそのまま放置していた。
先日、ふとしたことでこの資料のことを思い出し返事ぐらいはしなければ失礼かと考え連絡を取ってみたところ、元々の担当者が産休から復帰していたので、彼女から話を聞くことになった。
彼女は代理の人と同じ商品を勧めてきたが、「ジョーさんの事情を踏まえるとこういう試算になるかと思いました」と言って、保険料の金額と支払い期間を調整し、商品特有のメリットを生かしたシミュレーションを出してきた。そしてそれが僕の投資方針にぴったりそぐう内容だったのだ。
これには正直びっくりさせられた。同じ商品を勧められているのに、こうも担当者で魅力が変わるものなのか。
彼女がしたことは、商品についてよく勉強し、顧客の話をよく聞いた上で、商品を顧客のニーズに合う形で説明しただけ。極めて基本的なことだが、これが決して簡単ではないことを、例の社債を売り込んできた証券会社の営業マンが示している。
これは何も金融の世界に限らず、一般の営業マンについても言えることなのだろうと思う。