ずっと乗りたかった幻の飛行機、Airbus A380(後編)

前編から続く)

もともと日本の航空会社の中でA380を購入する予定だったのはスカイマークだった。だが、2015年に経営破綻してしまい、A380購入どころではなくなる。その後、ANAがスカイマークの再建支援に乗り出し、その一環として、スカイマークが注文した6機のうち3機をANAが引き継ぐことになる。

その頃には既にA380は時代遅れの飛行機と烙印を押されていたので、はたから見ると、ANAのA380の購入は空母時代に戦艦大和を製造した日本海軍を思い出させた。

しかし、ANAにはA380をハワイ便に導入すれば採算がとれる思惑があったのである。

ハワイ便は昔からJALの牙城で、JALが30%以上のシェアを維持している。ANAのシェアは10%台と低迷だったが搭乗率は高かったので、問題は需要ではなく供給の方にあった。増便には認可が必要であることから、供給を増やすには1便で飛ばせる人数を増やすのが最も手っ取り早い。

そこでA380の登場、と言うわけである。A380を3機導入すれば供給は1.5倍になる。高い搭乗率を維持できれば、それだけシェアも上がる。

A380の導入に関連して、ANAと国交省はちょっと頑張った。通常、パイロットが操縦できる機種は操作ミスを防ぐため1つに限定されているが、これだとパイロットの稼働率が悪くなる。A380のように3機しか運行していない場合、なおさらそうである。

航空業界ではその課題を解消するため、共通性が高い機種の間で混乗することを認めるMixed Fleet Flying (MFF)と呼ばれる制度がある。日本ではこの制度に基づいて2019年からBoeing 777と787の混乗が可能となっているが、2021年に国交省は新たにAirbus A320とA380の混乗も認めた。A320/A380でのMFF活用は世界初で、国交省もANAのA380の導入に貢献できるよう相当努力したのであろう。

こうした苦労を以って導入されたA380のホノルル便。日本の航空会社運行の便でA380に乗れるのはこの便しかないので、僕はとんぼ返りでもいいからいつか絶対に乗るのだと心に決めていた。

それがひょっとしたきっかけで実現できた。その経緯は次回のお楽しみ。

 
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